[HDS10-P14] 津波シミュレーションデータを用いたクラスタリングによる津波浸水域の計算メッシュの分類とその活用の試み
キーワード:津波シミュレーション、クラスタリング、K-Means法
防災科学技術研究所では、千葉県九十九里・外房地域にて津波被害を生じ得る多数の震源モデルに対して津波伝播・遡上の数値シミュレーションを実施し、沖合観測点(日本海溝海底地震津波観測網:S-net)での水圧変動と九十九里・外房地域での沿岸津波高・陸域浸水深をデータベース化した津波シナリオバンクを構築している。沖合で観測された水圧変動データに対して、津波シナリオバンクから似通った津波シナリオを選別する(Multi-index法、Yamamoto et al., 2016)ことで津波遡上・浸水を予測するシステムも開発中である。本システムのようにシナリオを選び浸水分布を予測する手法は、広域の遡上浸水分布を一度に予測できる反面、観測データから直接地点ごとの予測を行う手法(Baba et al., 2004 等)と比べて、地点ごとの実観測データとの比較によって予測の妥当性を検証することや、沖合の水圧変動によるシナリオ選別のふるまいと予測浸水深分布の対応を理解することが困難であるという課題を抱えている。
そこで本研究では、津波シナリオバンクに登録された浸水深データの面的な性質を理解し、妥当性検証の手法開発の土台を形成することを目的とし、多数の津波シナリオの浸水深データを用いて津波浸水域の計算メッシュを分類する手法を開発した。まず、津波シナリオの波源規模により浸水深が大幅に異なることに起因する入力データの偏りを防ぐため、前処理として浸水深の常用対数をとり、さらに主成分分析による次元削減を行った。次に、K-Means法によって、計算メッシュを多数の津波シナリオを通して似た浸水の振る舞いを示すクラスタに分類した。すなわち同じシナリオで同程度に浸水するメッシュ同士が同一のクラスタに含まれるような分類を行った。日本海溝沿いに波源を持つ1,067個の津波シナリオの浸水深を入力として、千葉県九十九里平野北部の約185万個の計算メッシュを100個のクラスタに分類した結果を示す(図1)。クラスタは、空間的に連続した標高、河川および海岸線からの距離、海岸防護施設との位置関係等を要因として形成されていることが確認できた。ある津波シナリオの浸水分布は、これらのクラスタの組み合わせによりおおまかに表現できると推測される。
また、上記クラスタリング結果にクラスタ間関係分析を適用して、早期に津波遡上の観測値が得られる海岸部の浸水深から内陸部の浸水深を予測する手法を検討した。例として、2011年東北地方太平洋沖地震の津波遡上シミュレーション結果を模擬的な観測データとし、海岸部の浸水深から内陸部の浸水深を予測した結果を示す(図2)。本手法は、シミュレーションによる浸水深分布の推定手法として期待できることがわかった。
そこで本研究では、津波シナリオバンクに登録された浸水深データの面的な性質を理解し、妥当性検証の手法開発の土台を形成することを目的とし、多数の津波シナリオの浸水深データを用いて津波浸水域の計算メッシュを分類する手法を開発した。まず、津波シナリオの波源規模により浸水深が大幅に異なることに起因する入力データの偏りを防ぐため、前処理として浸水深の常用対数をとり、さらに主成分分析による次元削減を行った。次に、K-Means法によって、計算メッシュを多数の津波シナリオを通して似た浸水の振る舞いを示すクラスタに分類した。すなわち同じシナリオで同程度に浸水するメッシュ同士が同一のクラスタに含まれるような分類を行った。日本海溝沿いに波源を持つ1,067個の津波シナリオの浸水深を入力として、千葉県九十九里平野北部の約185万個の計算メッシュを100個のクラスタに分類した結果を示す(図1)。クラスタは、空間的に連続した標高、河川および海岸線からの距離、海岸防護施設との位置関係等を要因として形成されていることが確認できた。ある津波シナリオの浸水分布は、これらのクラスタの組み合わせによりおおまかに表現できると推測される。
また、上記クラスタリング結果にクラスタ間関係分析を適用して、早期に津波遡上の観測値が得られる海岸部の浸水深から内陸部の浸水深を予測する手法を検討した。例として、2011年東北地方太平洋沖地震の津波遡上シミュレーション結果を模擬的な観測データとし、海岸部の浸水深から内陸部の浸水深を予測した結果を示す(図2)。本手法は、シミュレーションによる浸水深分布の推定手法として期待できることがわかった。