日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部、共同)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:小嶋 智

15:00 〜 15:15

[HDS11-04] 阿蘇中央火口丘群のテフラ被覆斜面において2016年熊本地震とその前後の降雨で発生した崩壊地の規模の比較

*木村 誇1酒井 直樹1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:阿蘇火山、中央火口丘群、テフラ被覆斜面、崩壊深、面積-土砂量関係、2016年熊本地震

2016年4月16日の熊本地震(MW7.0)により,阿蘇火山の中央火口丘群やカルデラ壁で多数の斜面崩壊が発生した。阿蘇火山周辺では,熊本地震以前の2012年7月初旬に豪雨によって多数の斜面崩壊が発生している。また,熊本地震から約2ヶ月が経過した2016年6月下旬の豪雨時にも新たに斜面崩壊が発生している。これらのうち,中央火口丘群で発生したものの多くが,阿蘇やその周辺の火山を起源とするテフラ(降下火山砕屑物)を主体とした土層の崩壊であった。しかしながら,これまでの調査報告を比較すると,2012年7月やそれ以前の豪雨災害で発生したテフラ被覆斜面の崩壊は深さ1~2 m程度のごく浅い崩壊であったのに対し,2016年熊本地震時には深さ5 m以上の崩壊も多数発生しており,崩壊に伴う移動土砂量の規模はイベントごとに大きく異なっていたのではないかと考えられる。このような崩壊規模の違いを定量化し,誘因との関係や時系列変化の特徴を明らかにすることは,火山地域における斜面災害の危険性評価に留まらず,山地の土砂収支や地形発達を理解する上でも重要と考えられる。

阿蘇火山周辺では,2012年7月初旬の豪雨の前後(2010年4~6月および2013年1月),2016年熊本地震の発生直後(2016年4月下旬),地震の約2ヵ月後の2016年6月下旬の豪雨後(2016年8月)に航空レーザ測量が実施されている。よって,各時期の測量データ間の標高変化をもとに,2016年熊本地震とその前後の降雨という3つのイベントで発生したテフラ被覆斜面の崩壊について,個々の崩壊地の崩壊深や移動土砂量を算出することができる。本発表では,崩壊に伴う移動土砂量をイベントごとに見積もり,1)地震,豪雨という誘因の違いと斜面崩壊の規模との関係,2)地震前後での豪雨による斜面崩壊の規模の違いを検討した結果を報告する。