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[HDS11-06] 美濃山地,揖斐川中流域に発達する二重山稜地形の発達過程
キーワード:山体重力変形地形、二重山稜、美濃山地
美濃山地西部を南流する揖斐川の中流域で山体重力変形地形の調査を行った.調査地域は横山ダムの東方に位置する権現山(1158 m)の北東尾根の標高850 m付近(以下A地点とする)とその約4 km南南東の津汲の北の標高500 m程度の稜線である.両地点とも河床からの比高は400-500 mで,これまでに山体重力変形地形が多数報告されてきた地域に比べると低標高・低比高地域である.航空レーザー測量により作られた詳細な地形図を解析することにより,そのような地域においても稜線上には顕著な二重山稜地形が発達していることが明らかになった.A, B両地点の山上凹地堆積物をハンドオーガーボーリングにより掘削したところ,A地点では,地表から,暗褐色有機質泥層(0-20 cm),黄褐色泥層(20-125 cm)の順に積み重なっており,B地点では,暗褐色有機質泥層(0-40 cm),褐灰色シルト質泥層(40-90 cm),黄褐色泥層(90-145 cm),暗褐色泥層(145-180 cm),礫質黄褐色泥層(180-225 cm)の順に積み重なり,その下には風化した基盤の砂岩層が確認できた.両地点のコア試料の堆積物を5 cmおきに採取し,極細粒砂分画に含まれるバブルウォール型火山ガラスの量をカウントしたところ,A地点では深度35-40 cm,B地点では深度175-180 cmに産出ピークが認められ,両試料には鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah: 7300 cal BP)と姶良Tn火山灰(AT: 29-26 ka)の屈折率と一致する火山ガラスが混在していた.A地点ではピークの下位,深度110-115 cmにもピークがみられ,その試料にはAT由来の火山ガラスのみが含まれていた.B地点では,ピークの下位では火山ガラスの含有量は少なくなり,深度185-190 cmの試料にはAT由来の火山ガラスのみが含まれていた.以上のことから,A地点の深度35-40 cm,B地点の深度175-180 cm がK-Ahの降灰年代と推定される.この年代値から平均堆積速度を計算するとA地点が0.051 mm/year,B地点が0.24 mm/yearとなり,それらの値を基底まで外挿すると地点A, Bの凹地形成年代は,それぞれ,25,000年前,9,400年前となる.A地点の深度110-115 cmをATの降灰年代とすれば,凹地形成年代は31,000年前となる.美濃山地の岐阜福井県境稜線(標高1,200-1,600 m)では凹地埋積堆積物中にAT由来の火山ガラスは産出しない.この原因についても現在考察を進めている.