日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS12] 人間環境と災害リスク

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻、共同)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)

[HDS12-P05] 茨城県常総市若宮戸地区における河畔砂丘の人為的地形改変による洪水リスクに対する脆弱化過程

*青山 雅史1 (1.群馬大学教育学部)

キーワード:2015年9月関東・東北豪雨、河畔砂丘、砂採取、人為的地形改変

1.はじめに
 鬼怒川・小貝川低地の茨城県常総市若宮戸地区における2015年関東・東北豪雨による溢水発生地点周辺では,1960年代以降に砂の採掘や太陽光発電ソーラーパネル設置のため河畔砂丘が大規模に削剥され,無堤区間において堤防の役割を果たしていた河畔砂丘の縮小が進行したことに伴い洪水に対する脆弱性が高まっていったことが確認された.本発表では,本地域における高度経済成長期の砂採取や最近(2014年以降)のソーラーパネル設置のための造成などによる河畔砂丘の人為的地形改変過程とこの地区の溢水発生地点との関係を示す.

2.調査方法
 2015年関東・東北豪雨による溢水発生地点の一つである鬼怒川・小貝川低地の茨城県常総市若宮戸地区鬼怒川左岸の河畔砂丘における1947年以降の人為的地形変化(特に河畔砂丘の平面分布と面積の変化)と土地利用変化について,多時期の米軍・国土地理院撮影空中写真の判読,それらの空中写真や旧版地形図等を用いたGIS解析,集落内の石碑に関する調査,住民への聞き取り調査などから検討した.

3.調査結果
 1947年時点における若宮戸地区の河畔砂丘は,南北方向の長さが2,000m弱,東西方向の最大幅は400m弱,面積42haであり,3~4列の明瞭なリッジを有していた.その後,この河畔砂丘は人為的土地改変によって次第に縮小していった.1960年代中期から1970年代前半にかけて砂の採取のために削剥され,この時期に面積が大きく減少し,明瞭なリッジ(高まり)が1列のみとなり幅が著しく減少した(細くなった)箇所が生じた.若宮戸集落内には,元来河畔砂丘上にあった石碑や石塔が砂採取工事のため1968年に移築されたことを記した碑が存在する.2014年以降は,ソーラーパネル設置のため,河畔砂丘の人為的削剥が行われた.これらの結果,洪水発生直後の2015年9月末時点の河畔砂丘の面積は,1947年時点の河畔砂丘面積の約31%と大幅に縮小していた.2014年頃からソーラーパネル設置のため河畔砂丘北半部の一部が削られて河畔砂丘が消失した区間が生じた.この区間には,応急対策として大型土のうが設置されていた.2015年関東・東北豪雨におけるこの地区での溢水は,河畔砂丘が人為的に削られて洪水に対して著しく脆弱化していた2箇所において発生した.2015年段階の河畔砂丘の面積は13haであり,1947年から2015年にかけて1/3弱に減少していた.