日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01] 自然資源・環境の利用・変化・管理:社会科学と地球科学の接点

2018年5月20日(日) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:古市 剛久(北海道大学農学研究院)、佐々木 達(宮城教育大学)、上田 元(一橋大学・大学院社会学研究科、共同)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、座長:古市 剛久(北海道大学)、佐々木 達(宮城教育大学)

09:45 〜 10:00

[HGG01-04] 琵琶湖の水草資源活用に向けたオープンガバナンスアプローチ

*近藤 康久1奥田 昇1淺野 悟史2石川 可奈子2加納 圭3鎌谷 かおる9,1熊澤 輝一1佐藤 賢一4下山 紗代子5藤澤 栄一6,7松下 京平3脇田 健一8 (1.総合地球環境学研究所、2.滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、3.滋賀大学、4.京都産業大学、5.リンクデータ、6.近江ディアイ株式会社、7.Code for Shiga/Biwako、8.龍谷大学、9.立命館大学)

キーワード:琵琶湖、水草堆肥、地域資源、順応的環境ガバナンス、コミュニティー・エンパワーメント

琵琶湖では、特に南湖において水草の繁茂が著しく、船舶の航行障害や湖岸に漂着した水草の悪臭などの問題が発生している。滋賀県は、年間約6億円を投入し、水草の除去および堆肥化事業を進めている。しかし、水草を除去できる範囲が限られ、また堆肥の活用も農家等への無償配布に限定されているため、より効果的な施策が必要となっている。

 関係者からの聞き取りを通じて、研究者と県が水草繁茂を環境問題と理解しているのに対し、関係各市と湖岸住民にとっての水草は漂着して悪臭を放つごみの社会問題の側面が大きいという、問題理解のずれがあることが分かった。さらに、湖岸から離れた場所に暮らす住民は、水草問題に対する関心が必ずしも高くない。

 現状では水草問題の抜本的解決を図るのは困難であるが、関係各市ではオープンデータを活用した市民参加型の政策形成アクションであるオープンガバナンスの機運が高まっている。この状況に着目して、水草問題への関心はまだ小さいけれども地域貢献意欲の高い市民グループを巻き込み、市民が主体となって水草活用事業を構想するアイディアソンを実施する。こうして問題軸の「ずらし」(宮内編2013)を仕掛けることにより、市民の問題意識が自発的に高まり、自律的・持続的に水草資源を活用するコミュニティーが形成されていくことをねらう。本発表では、このようなオープン型の新しい順応的環境ガバナンスのあり方について議論したい。