11:15 〜 11:30
[HGM03-08] メガリップルの成因
キーワード:メガリップル、風食砂面低下、飛砂プロセス、限定的産状、鳥取砂丘、グレートサンドデューンズ国立公園
1.はじめに
径4-8mm前後の粗い粒子が混じる砂丘地においては,波長が30cm~数mにおよぶメガリップルが形成されることがある。Wind ripple(風紋)は砂丘中に観察されるのに対して,メガリップルは極限られた空間にしか観察されない。この限定的産状の一つの理由は,粗い粒子の散在範囲が限られること(粗粒粒子の有限性)にある。
2.鳥取砂丘で観察されたメガリップル
鳥取砂丘では,2013年春~2015年の春に,同じ場所でメガリップルが出現した。L-9杭付近に広がる最大面積の火山灰露出地周辺であった。この火山灰層は2006年以降に出現し,植生マウンドに囲まれた盆地状空間に位置した。そのため,周囲の植生マウンドによる飛砂の捕捉により,流砂の連続性がたたれ,砂面の低下が続き(浅田,2018),火山灰層露出地の拡大が継続してきた。表面に露出した火山灰層は,乾湿風化に伴い団粒状となり,降雨時の地表流により,周囲の砂丘地表面へと運ばれる。火山灰層の団粒状粒子は径数 mmあり,砂丘砂と比べ明らかに粗い。これがきっかけとなり,2013年の春先から3年間連続して,メガリップルが観察されるようになった。しかし火山灰層は更に拡大を続け,2016年以降はメガリップルが観察されなくなった。
3.風洞実験によるメガリップルの再現
小玉(2017)はポリプロピレン楕円体粒子(中径3.8 mm)と細砂を用いた風洞実験にて,メガリップルを再現した。ポリプロピレン粒子の散布量を変えた一連の実験で,多すぎず,少なすぎず適度な散布量の時,風速16-17 m/sのもとで波長1mを超えるメガリップルが形成された。この実験は,メガリップルの形成には風食による砂面低下が重要なプロセスを担うことを示唆した。つまり,粗粒粒子が集積した場所が,メガリップルの峰をなし,その他の部分が下に凸型に風食を受ける姿が明らかにされた。
4.Great Sand Dunes National Park and Preserveにおいて観察されるメガリップル
アメリカ合衆国コロラド州南部にあるGreat Sand Dunesでは,東方山地から流出するMedano Creekが砂丘の東南縁を流れる。この河床砂に混じる径4 mm前後の球形粒子が転動により砂丘地に運ばれる。遠目には黄土色の砂丘地に所々白っぽい色調で見える場所に粗粒子の集積が認められる。ここに行くとほとんどの場所で,波長数m,波高数10 cmにおよぶメガリップルが観察される。2016年9月12-13日に巻き尺とコンベックスを用いて,3測線で縦断面形を計測した。粗粒粒子の分布から判断して,いずれのメガリップルも東からの強風により形成されたものであった。
波長と波高にはやや強い正の相関が認められ,最大で波長7.1 m,波高20 cm,小さいもので波長1 m,波高4 cmほどであった。メガリップルは,長さ50 m~75 mほどの区域に観察され,中央部に最も波長・波高の大きいものが分布し,両端に向けてそれらの大きさを減じた。このことは,風食に応じて生産された飛砂量が風下側に増加するために,飛砂量がある一定値を超えると風食による砂面低下が起こらなくなることの反映と考えられる。つまり,風食低下に伴い形成されるメガリップルの宿命として,極限られた範囲にしか形成されないことは,流砂プロセスの観点から理にかなってものとして理解される。
5.おわりに
鳥取砂丘で2013年~2015年に観察されたメガリップルにヒントを得て,メガリップルの形成に関する風洞実験が実施された(小玉,2017)。その結果,風食による砂面低下過程でメガリップルが形成されることが明らかになった,メガリップルは野外では極限られた範囲にしか観察されないが,その理由は粗粒粒子の有限性のほかに,風食に伴う飛砂量の風下側への増加があげられる。このことを確かめるべく,コロラド州南部のGreat Sand Dunesにおいてメガリップルの縦断面測量を実施した。その結果,長さ50m~75mの範囲に連続して観察されたメガリップルは,その中央部で波長・波高ともに最大となり,両端に向けてその大きさを減じていることが明らかになった。このことは風食に伴う飛砂量増加が,風下側の砂面低下を難しくした反映を捉えられる。つまり,風食に伴う砂面低下により形成されるメガリップルは,必然的に極限られた範囲にしか形成されない微地形となる。
径4-8mm前後の粗い粒子が混じる砂丘地においては,波長が30cm~数mにおよぶメガリップルが形成されることがある。Wind ripple(風紋)は砂丘中に観察されるのに対して,メガリップルは極限られた空間にしか観察されない。この限定的産状の一つの理由は,粗い粒子の散在範囲が限られること(粗粒粒子の有限性)にある。
2.鳥取砂丘で観察されたメガリップル
鳥取砂丘では,2013年春~2015年の春に,同じ場所でメガリップルが出現した。L-9杭付近に広がる最大面積の火山灰露出地周辺であった。この火山灰層は2006年以降に出現し,植生マウンドに囲まれた盆地状空間に位置した。そのため,周囲の植生マウンドによる飛砂の捕捉により,流砂の連続性がたたれ,砂面の低下が続き(浅田,2018),火山灰層露出地の拡大が継続してきた。表面に露出した火山灰層は,乾湿風化に伴い団粒状となり,降雨時の地表流により,周囲の砂丘地表面へと運ばれる。火山灰層の団粒状粒子は径数 mmあり,砂丘砂と比べ明らかに粗い。これがきっかけとなり,2013年の春先から3年間連続して,メガリップルが観察されるようになった。しかし火山灰層は更に拡大を続け,2016年以降はメガリップルが観察されなくなった。
3.風洞実験によるメガリップルの再現
小玉(2017)はポリプロピレン楕円体粒子(中径3.8 mm)と細砂を用いた風洞実験にて,メガリップルを再現した。ポリプロピレン粒子の散布量を変えた一連の実験で,多すぎず,少なすぎず適度な散布量の時,風速16-17 m/sのもとで波長1mを超えるメガリップルが形成された。この実験は,メガリップルの形成には風食による砂面低下が重要なプロセスを担うことを示唆した。つまり,粗粒粒子が集積した場所が,メガリップルの峰をなし,その他の部分が下に凸型に風食を受ける姿が明らかにされた。
4.Great Sand Dunes National Park and Preserveにおいて観察されるメガリップル
アメリカ合衆国コロラド州南部にあるGreat Sand Dunesでは,東方山地から流出するMedano Creekが砂丘の東南縁を流れる。この河床砂に混じる径4 mm前後の球形粒子が転動により砂丘地に運ばれる。遠目には黄土色の砂丘地に所々白っぽい色調で見える場所に粗粒子の集積が認められる。ここに行くとほとんどの場所で,波長数m,波高数10 cmにおよぶメガリップルが観察される。2016年9月12-13日に巻き尺とコンベックスを用いて,3測線で縦断面形を計測した。粗粒粒子の分布から判断して,いずれのメガリップルも東からの強風により形成されたものであった。
波長と波高にはやや強い正の相関が認められ,最大で波長7.1 m,波高20 cm,小さいもので波長1 m,波高4 cmほどであった。メガリップルは,長さ50 m~75 mほどの区域に観察され,中央部に最も波長・波高の大きいものが分布し,両端に向けてそれらの大きさを減じた。このことは,風食に応じて生産された飛砂量が風下側に増加するために,飛砂量がある一定値を超えると風食による砂面低下が起こらなくなることの反映と考えられる。つまり,風食低下に伴い形成されるメガリップルの宿命として,極限られた範囲にしか形成されないことは,流砂プロセスの観点から理にかなってものとして理解される。
5.おわりに
鳥取砂丘で2013年~2015年に観察されたメガリップルにヒントを得て,メガリップルの形成に関する風洞実験が実施された(小玉,2017)。その結果,風食による砂面低下過程でメガリップルが形成されることが明らかになった,メガリップルは野外では極限られた範囲にしか観察されないが,その理由は粗粒粒子の有限性のほかに,風食に伴う飛砂量の風下側への増加があげられる。このことを確かめるべく,コロラド州南部のGreat Sand Dunesにおいてメガリップルの縦断面測量を実施した。その結果,長さ50m~75mの範囲に連続して観察されたメガリップルは,その中央部で波長・波高ともに最大となり,両端に向けてその大きさを減じていることが明らかになった。このことは風食に伴う飛砂量増加が,風下側の砂面低下を難しくした反映を捉えられる。つまり,風食に伴う砂面低下により形成されるメガリップルは,必然的に極限られた範囲にしか形成されない微地形となる。