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[HQR04-08] ルミネッセンス年代測定によるアラビア半島南東部の水環境変遷の復元
キーワード:OSL年代測定、乾湿変化、扇状地、バート遺跡群
アラビア半島南東部では,インドモンスーンの活動の強弱により乾湿の変化が繰り返されてきた.完新世においては,初期に湿潤であったのに対し,中期以降に乾燥化し,狩猟採集からオアシス農業への転換が起こった可能性が指摘されている.本研究ではこのような自然環境の変化と人間活動の相互作用プロセスを明らかにするため,オマーンのユネスコ世界遺産,バート遺跡群の東に位置し,ワジ・シャルサー(Wadi Sharsah)に合流する小規模扇状地を掘削し,堆積物の記載と石英および長石のOSL年代測定を行った.
その結果,この小扇状地は12ka頃に乾燥環境下で,まれに発生する降雨起源のsheetfloodにより形成されたと考えられる.その後,ワジに恒常的な河川が存在する湿潤期があり,その年代は10-8.5ka頃と推定される.このワジの河谷はその後の乾燥期への移行時期(6-5.5ka)に離水したと考えられ, 堆積物の表層は土壌化した.バート遺跡群の成立が約5.2ka頃に遡ることを考えると,オアシス農業への転換の時期は乾燥化の直後であることがわかる.このように堆積物の詳細な記載とOSL年代測定の併用により,アラビア半島における環境変化と人間活動の関わりがより詳細に明らかにできる可能性がある.
その結果,この小扇状地は12ka頃に乾燥環境下で,まれに発生する降雨起源のsheetfloodにより形成されたと考えられる.その後,ワジに恒常的な河川が存在する湿潤期があり,その年代は10-8.5ka頃と推定される.このワジの河谷はその後の乾燥期への移行時期(6-5.5ka)に離水したと考えられ, 堆積物の表層は土壌化した.バート遺跡群の成立が約5.2ka頃に遡ることを考えると,オアシス農業への転換の時期は乾燥化の直後であることがわかる.このように堆積物の詳細な記載とOSL年代測定の併用により,アラビア半島における環境変化と人間活動の関わりがより詳細に明らかにできる可能性がある.