[HQR04-P04] 珪藻分析からみた関東平野中川低地北部~思川低地における縄文海進とMIS5~7の古環境復元‐栗橋コアを中心に
キーワード:珪藻分析、縄文海進、MIS5e、栗橋、五霞、ボーリング資料
栗橋周辺は中川低地北部に位置し,東方の古河台地と隣接し,北方では渡良瀬遊水地がある思川低地へと続いている.従来の研究では,縄文海進期の海域は,中川低地北部(栗橋周辺)には広がっていたが,思川低地最下流部の思川コアの分析から,思川低地には到達していないと考えられている(野口ほか,2017など).
一方,MIS5~7の海進期については,思川コア周辺の台地の地形面区分ではMIS5a~MIS5eとされているが(貝塚ほか,2000),古河付近から五霞にいたる地域のMIS5a~MIS5eについては,思川コア(野口ほか,2017など)を除いては検討が進んでいない.
そこで,思川低地から中川低地北部にかけて,茨城県および埼玉県が公開しているボーリング資料や,利根川河川事務所から提供されたボーリング資料,Kunijiban(国土地盤情報検索サイト)などを利用して,地形区分の再検討を行った.
利根川の東遷事業によって大きく地形改変された栗橋~五霞地域の沖積層基底地形は極めて複雑であるが(遠藤など,1988),今回のボーリング資料を検討した結果,沖積低地よりわずかに高い五霞周辺は,関東ローム層に覆われた台地であり,有機質な砂泥層からなる常総層で構成され,その下位に貝殻を含む泥層が認められた.この泥層のトップは標高-14m付近にあり、MIS5eに対応する可能性がある.野口ほか(2017)では思川コアの珪藻分析とイオウ分析から,MIS5eに相当する内湾環境を示したユニットC(標高-17.20m ~ -3.16m)が認められ,五霞の標高-14m以深の層準がこれに対応する可能性が強い.
これに対し,栗橋~古河地域におけるBGの分布高度は,遠藤(2017)から判断し,栗橋付近でその基底は-20m,古河付近で-8mであり,層厚は共に5m前後である.思川コアでは標高-4m付近で層厚約7mと,ほぼ問題のない範囲で認められている.本研究で扱う栗橋コア(全長約32m)は,標高-17.29m~-15.23mにBGがあり,縄文海進期の堆積物が主体をなしている.したがって,五霞の台地の直ぐ西に沖積層の谷が接するものと思われる.栗橋コアを中心とした分析から,MIS5eの堆積物を削り込んで堆積したBGとその谷を遡上した縄文海進像から,栗橋周辺における古東京湾と奥東京湾の古環境復元について検討を行う.
謝辞:国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所三橋さゆり事務所長ならびに伊藤一十三副所長には,ボーリング資料を提供していただき,便宜を図って頂いた.深く御礼申し上げます.
引用文献
貝塚爽平・小池一之・遠藤邦彦・山崎晴雄・鈴木毅彦編(2000)関東・伊豆小笠原.日本の地形,4,東大出版会,349pp.
小杉正人(1989)珪藻化石群集による古奥東京湾の塩分濃度の推定.第四紀研究,28,19-26.
遠藤邦彦・小杉正人・菱田 量(1988)関東平野の沖積層とその基底地形.日本大学文理学部自然科学研究所「研究紀要」,23,37-48.
遠藤邦彦(2017)改訂版 日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層.476p,株式会社冨山房インターナショナル.
野口真利江・須貝俊彦・石綿しげ子・鈴木正章・森田泰彦・遠藤邦彦(2017)コラム8 思川コアから見る奥東京湾(縄文海進)と古東京湾(MIS5e)の海の最奥部.遠藤邦彦著「改訂版 日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層」:385-389,株式会社冨山房インターナショナル.
一方,MIS5~7の海進期については,思川コア周辺の台地の地形面区分ではMIS5a~MIS5eとされているが(貝塚ほか,2000),古河付近から五霞にいたる地域のMIS5a~MIS5eについては,思川コア(野口ほか,2017など)を除いては検討が進んでいない.
そこで,思川低地から中川低地北部にかけて,茨城県および埼玉県が公開しているボーリング資料や,利根川河川事務所から提供されたボーリング資料,Kunijiban(国土地盤情報検索サイト)などを利用して,地形区分の再検討を行った.
利根川の東遷事業によって大きく地形改変された栗橋~五霞地域の沖積層基底地形は極めて複雑であるが(遠藤など,1988),今回のボーリング資料を検討した結果,沖積低地よりわずかに高い五霞周辺は,関東ローム層に覆われた台地であり,有機質な砂泥層からなる常総層で構成され,その下位に貝殻を含む泥層が認められた.この泥層のトップは標高-14m付近にあり、MIS5eに対応する可能性がある.野口ほか(2017)では思川コアの珪藻分析とイオウ分析から,MIS5eに相当する内湾環境を示したユニットC(標高-17.20m ~ -3.16m)が認められ,五霞の標高-14m以深の層準がこれに対応する可能性が強い.
これに対し,栗橋~古河地域におけるBGの分布高度は,遠藤(2017)から判断し,栗橋付近でその基底は-20m,古河付近で-8mであり,層厚は共に5m前後である.思川コアでは標高-4m付近で層厚約7mと,ほぼ問題のない範囲で認められている.本研究で扱う栗橋コア(全長約32m)は,標高-17.29m~-15.23mにBGがあり,縄文海進期の堆積物が主体をなしている.したがって,五霞の台地の直ぐ西に沖積層の谷が接するものと思われる.栗橋コアを中心とした分析から,MIS5eの堆積物を削り込んで堆積したBGとその谷を遡上した縄文海進像から,栗橋周辺における古東京湾と奥東京湾の古環境復元について検討を行う.
謝辞:国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所三橋さゆり事務所長ならびに伊藤一十三副所長には,ボーリング資料を提供していただき,便宜を図って頂いた.深く御礼申し上げます.
引用文献
貝塚爽平・小池一之・遠藤邦彦・山崎晴雄・鈴木毅彦編(2000)関東・伊豆小笠原.日本の地形,4,東大出版会,349pp.
小杉正人(1989)珪藻化石群集による古奥東京湾の塩分濃度の推定.第四紀研究,28,19-26.
遠藤邦彦・小杉正人・菱田 量(1988)関東平野の沖積層とその基底地形.日本大学文理学部自然科学研究所「研究紀要」,23,37-48.
遠藤邦彦(2017)改訂版 日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層.476p,株式会社冨山房インターナショナル.
野口真利江・須貝俊彦・石綿しげ子・鈴木正章・森田泰彦・遠藤邦彦(2017)コラム8 思川コアから見る奥東京湾(縄文海進)と古東京湾(MIS5e)の海の最奥部.遠藤邦彦著「改訂版 日本の沖積層-未来と過去を結ぶ最新の地層」:385-389,株式会社冨山房インターナショナル.