[HQR04-P12] テフラ及び花粉分析に基づく会津盆地西部のオールコア(GS-NT-1)の層序
キーワード:会津盆地、地下地質層序、テフラ、花粉化石
1.はじめに
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所では,会津盆地において地中熱利用促進のための地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,盆地浅部(深度100m程度)の地下地質調査を行っている.これまでに会津盆地東部の2地点においてボーリング調査を実施し(GS-SOK-1,標高175.99m,深度130m:塩川;GS-AZU-1,標高208.36m,深度100m:会津若松),各コアの層序について報告した(石原ほか,2015,2016, 2017)また,会津盆地西部では鈴木ほか(2016)によるオールコア(AB-12-2,標高179.09m,深度99.95m:会津坂下)の層序が報告されている.2016年に,盆地西部の新鶴において新たに100mのオールコア(GS-NT-1,標高201.6m)を掘削した.本発表では,岩相記載,テフラ分析,花粉化石分析結果に基づきGS-NT-1の層序について報告する.
2.GS-NT-1コアの記載
岩相記載:深度30mまでは,暗灰色~緑灰色のシルト層と砂層(粗砂~中砂主体)が1~4mの厚さで互層状に分布し,有機質シルト層や泥炭層を所々に薄く挟む.深度30m以深は,最大径6~7cmの礫を含む中礫主体の亜円礫層と,砂・シルト層がそれぞれ1~4mの厚さで互層状に分布する.
テフラ分析結果:層相・鉱物組み合わせなどの記載と,鉱物・火山ガラスの屈折率及びSEM-EDSによる主成分化学組成分析に基づき,深度2.3~3.9mの軽石砂層を沼沢沼沢湖(Nm-NM,5.4 ka;山元,2003),深度25.58~25.62mの火山灰層を姶良丹沢(AT,30 ka;Smith et al., 2013),深度38.7~38.9mの軽石砂層を沼沢金山(Nm-KN;鈴木・早田,1994),深度51.9~52.2mの軽石層を田頭(TG,129 ka;鈴木ほか,2004)の各テフラに対比した.また,深度99.9~100.0mの軽石砂層は,本コアから約6km北北西の地点にあるAB-12-2の深度99.25~99.26mから検出された未同定テフラ(鈴木ほか,2016)に対比できる.このテフラは,AB-12-2コアにおいて砂子原松ノ下テフラ(Sn-MT,180-260ka;鈴木ほか,2004)の下位に認められる.
花粉分析結果:GS-NT-1の13.25m以深のシルト層から28試料を採取し,花粉化石の同定を行った.木本植物の分類群の組み合わせに基づき,深度順に11の地域花粉化石群集帯(NT-1,-2,-3,…-11)を設定した.NT-2,-5,-7帯の花粉化石群集は針葉樹のマツ科(Pinaceae)と広葉樹のBetulaが優勢で,ブナ属(Fagus)やコナラ属(Quercus)などの温帯性広葉樹が極めて低率であることから,相対的に冷涼な気候下にあったと考えられる.一方,NT-1,-4,-8,-10帯ではFagusやQuercusが相対的に多く認められ,Pinaceaeが低率となることから,相対的に温暖な気候であったと考えられる.NT-3,-6帯はBetula,Alnusが優勢で他の化石群集が極めて低率であり,中間型あるいは植生の移行期に当たる可能性が考えられる.
GS-NT-1コアの花粉化石群集は,針葉樹の優勢な分帯と温帯性広葉樹が優勢な分帯が概ね交互に出現する.テフラ年代に基づき海洋酸素同位体ステージ(MIS)と各花粉帯を比較した結果,NT-2帯はMIS 3~2に,NT-5帯はMIS 4に,NT-6帯はMIS 5にそれぞれ対比された.また,相対的に冷涼なNT-7帯はMIS 6に,相対的に温暖なNT-1帯,NT-3~-4帯,NT-8帯およびNT-10帯は,それぞれMIS 1,MIS 3,MIS 7に相当すると考えられる.
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所では,会津盆地において地中熱利用促進のための地中熱ポテンシャル評価研究の一環として,盆地浅部(深度100m程度)の地下地質調査を行っている.これまでに会津盆地東部の2地点においてボーリング調査を実施し(GS-SOK-1,標高175.99m,深度130m:塩川;GS-AZU-1,標高208.36m,深度100m:会津若松),各コアの層序について報告した(石原ほか,2015,2016, 2017)また,会津盆地西部では鈴木ほか(2016)によるオールコア(AB-12-2,標高179.09m,深度99.95m:会津坂下)の層序が報告されている.2016年に,盆地西部の新鶴において新たに100mのオールコア(GS-NT-1,標高201.6m)を掘削した.本発表では,岩相記載,テフラ分析,花粉化石分析結果に基づきGS-NT-1の層序について報告する.
2.GS-NT-1コアの記載
岩相記載:深度30mまでは,暗灰色~緑灰色のシルト層と砂層(粗砂~中砂主体)が1~4mの厚さで互層状に分布し,有機質シルト層や泥炭層を所々に薄く挟む.深度30m以深は,最大径6~7cmの礫を含む中礫主体の亜円礫層と,砂・シルト層がそれぞれ1~4mの厚さで互層状に分布する.
テフラ分析結果:層相・鉱物組み合わせなどの記載と,鉱物・火山ガラスの屈折率及びSEM-EDSによる主成分化学組成分析に基づき,深度2.3~3.9mの軽石砂層を沼沢沼沢湖(Nm-NM,5.4 ka;山元,2003),深度25.58~25.62mの火山灰層を姶良丹沢(AT,30 ka;Smith et al., 2013),深度38.7~38.9mの軽石砂層を沼沢金山(Nm-KN;鈴木・早田,1994),深度51.9~52.2mの軽石層を田頭(TG,129 ka;鈴木ほか,2004)の各テフラに対比した.また,深度99.9~100.0mの軽石砂層は,本コアから約6km北北西の地点にあるAB-12-2の深度99.25~99.26mから検出された未同定テフラ(鈴木ほか,2016)に対比できる.このテフラは,AB-12-2コアにおいて砂子原松ノ下テフラ(Sn-MT,180-260ka;鈴木ほか,2004)の下位に認められる.
花粉分析結果:GS-NT-1の13.25m以深のシルト層から28試料を採取し,花粉化石の同定を行った.木本植物の分類群の組み合わせに基づき,深度順に11の地域花粉化石群集帯(NT-1,-2,-3,…-11)を設定した.NT-2,-5,-7帯の花粉化石群集は針葉樹のマツ科(Pinaceae)と広葉樹のBetulaが優勢で,ブナ属(Fagus)やコナラ属(Quercus)などの温帯性広葉樹が極めて低率であることから,相対的に冷涼な気候下にあったと考えられる.一方,NT-1,-4,-8,-10帯ではFagusやQuercusが相対的に多く認められ,Pinaceaeが低率となることから,相対的に温暖な気候であったと考えられる.NT-3,-6帯はBetula,Alnusが優勢で他の化石群集が極めて低率であり,中間型あるいは植生の移行期に当たる可能性が考えられる.
GS-NT-1コアの花粉化石群集は,針葉樹の優勢な分帯と温帯性広葉樹が優勢な分帯が概ね交互に出現する.テフラ年代に基づき海洋酸素同位体ステージ(MIS)と各花粉帯を比較した結果,NT-2帯はMIS 3~2に,NT-5帯はMIS 4に,NT-6帯はMIS 5にそれぞれ対比された.また,相対的に冷涼なNT-7帯はMIS 6に,相対的に温暖なNT-1帯,NT-3~-4帯,NT-8帯およびNT-10帯は,それぞれMIS 1,MIS 3,MIS 7に相当すると考えられる.