日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR04] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、水野 清秀(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門、共同)、米田 穣(東京大学総合研究博物館)

[HQR04-P15] 泥炭試料を用いた湿原堆積物の高精度放射性炭素年代決定

*宮入 陽介1近藤 玲介2冨士田 裕子3横山 祐典1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.皇學館大学 教育開発センター、3.北海道大学北方圏フィールド科学センター植物園)

キーワード:加速器質量分析、放射性炭素年代測定、泥炭

湿地帯等に発達する泥炭堆積物は、炭素を多く含み、放射性炭素年代測定が一般的に容易であるといえる。しかしながら、泥炭は分析に用いる有機物が生物の遺体ではなく、生物遺体が分解変質した物質を主とするため、炭素の供給起源が2次的であるという年代推定する上での不確実性を有する。しかなしながら、泥炭が堆積するような嫌気的な環境では生物擾乱等も起きにくく、堆積速度が大きく変化しないことが多い。また、堆積速度に変化を生じたとしても、地層累重の法則により、下層の堆積物ほど古い堆積物であることが担保されているため、放射性炭素濃度の変動周期より十分短い年代間隔で試料採取を行えば、木材のウイグルマッチング法に等に比較すれば精度はやや落ちるが、高精度年代決定が可能となる可能性が高い。
 本研究では、北海道北部の猿払川湿原において採取されたボーリングコア中の試料を用いて、泥炭試料を用いた湿原堆積物の高精度放射性炭素年代決定法を検討した。試料は泥炭バルク試料の他、陸上植物遺体や藻類で、AMS14C年代測定は,東京大学大気海洋研究所高解像度環境解析研究センター所有のシングルステージ加速器質量分析装置により行った。
 また藻類の年代分析では、研究対象地域が汽水域であったことが推察されるため、同一湿原内より得られたコア試料からの珪藻分析によって復元された古塩分濃度(嵯峨山ほか2018)を用いて、汽水環境による海水と大気のリザーバー効果の寄与率を見積もることより、確度よく暦年推定できる可能性が確認した。
 本発表では、猿払川湿原において採取されたボーリングコア中の試料を例にして泥炭試料を用いた湿原堆積物の高精度放射性炭素年代決定の可能性について議論する。