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[HSC05-04] CO2地中貯留のための地質モデル構築における堆積学的アプローチ
キーワード:CO2地中貯留、地質モデリング、堆積学的解析
二酸化炭素(CO2) 地中貯留における地質モデルは、CO2の貯留可能量評価を主要な目的として構築されるが、それだけでなく、CO2圧入後の長期挙動予測、貯留の安全性アセスメント、施設やモニタリング計画の策定等の各検討作業においても、そのモデルが前提とされるため、非常に重要な技術項目である。この地質モデルの構築手法に関しては、石油・天然ガス業界で開発されてきた手法が応用されることが多く、一般的には広域的な地質概念モデルや弾性波探査データ、坑井データ(物理検層・コア・X線CT・薄片)を基にモデルが構築される。しかし、世界的にCO2地中貯留の対象となるのは、石油・天然ガス・石炭などの地下資源産業が対象としない地下浅部の帯水層を貯留ターゲットとする場合が多く、帯水層は相対的に基礎調査が進んでいないことから貯留層評価に利用できるデータの量や質が乏しい。そのため、それらのデータを使用して構築された地質モデルはその地質構造や貯留岩性状の分布に対する不確実性が大きくなる。したがって、限られたデータから貯留層の規模に合った地質モデルを構築し、不確実性を低減させる技術の確立・一般化は、将来的な商業規模のCO2 地中貯留において非常に重要となる。そこで本検討では、地質モデル構築の際に堆積学的知見を取り入れることの重要性に着目した。CO2の地中貯留の対象となる貯留層の分布形態や連続性、孔隙率や浸透率といった貯留岩性状の分布は、堆積後の構造運動や二次的な続成作用の影響も考慮する必要はあるが、その地層が堆積した当時の初生的な堆積環境・堆積システムに依存する。したがって、限られたデータからそれらを的確に復元・認定することが出来れば、データが不足しているエリア、あるいはデータの存在しないエリアの地層の分布を推定することが可能となる。また、地質モデル構築の際に使用する弾性波探査データと坑井データは両者の分解能や空間的coverageにギャップがあることが一般的に認識されている。その一方で、分解能・空間的coverageの異なる地質データはそれぞれのスケールに応じた堆積学的な情報を保持している。例えば、分解能の高いコアやイメージログからは地層の詳細な堆積相やそこから考えられる堆積環境の時間的変化を把握することが可能であるが、空間的なcoverageの大きい弾性波探査データからは、その地層の広がりを推定することが可能である。したがって、限定的かつ分解能・空間的coverageの異なるデータからそれぞれ重要な要素を抽出し、堆積学的な解析結果を統合して解釈することで、初生的な堆積環境を考慮したコンセプトやフレームワークを構築することが可能となる。このコンセプトやフレームワークに基づいて地質モデルを構築することで、不確実性を低減できることが期待される。