11:30 〜 11:45
[HSC05-10] コイルドチュービング内に設置した光ファイバーによる国内初のDAS-VSP実証試験
キーワード:Distributed Acoustic Sensing、DAS、VSP、貯留層モニタリング、二酸化炭素地中貯留
CCS事業では、安全管理の一環として、圧入したCO2が計画通り対象貯留層に限定されているかを、リアルタイムないしは短い時間間隔での準リアルタイムでモニタリングすることが不可欠である。従来より、反射法地震探査と補完しあう手法と考えられているのがVertical Seismic Profile (VSP) サーベイであり、近年の技術進歩により、ジオフォンに代わり、坑内に設置した光ファイバーを受振器として使用するDistributed Acoustic Sensing(DAS)計測を用いたVSPサーベイ(DAS-VSP)が注目されており、現場実証試験事例が報告されはじめている。
DAS-VSPを実施するにあたり観測坑内に光ファイバーを設置する必要があるが、既存実証試験では、取得されるデータの質を鑑みて、現時点で選択可能な設置方法のうちBehind CSG法およびAlong TBG法が主として採用されてきた。一方、Inside CT法には、ファイバーケーブルを坑内に展開する際の破断リスクが小さい、坑底温度/圧力センサーも同時に展開できる、および、既存井も観測井として使用できる、といった前者にない利点があり、同方式によるDAS-VSP記録の品質次第では、長期モニタリングを目的とした光ファイバー設置手段の有効な手法となりえると考えられる。そこで、国際石油開発帝石株式会社(以下、INPEX)は、経済産業省による「安全なCCS実施のためのCO2貯留技術の研究開発事業」を受託した二酸化炭素地中貯留技術研究組合の平成29年度研究活動の一環として、2017年8月に、Inside CT方式でのDAS-VSP(Inside CT-DAS-VSP)実証試験を実施した。本試験結果とそれら既存事例の結果とを併せることで、将来のモニタリング計画の検討材料となることが期待される。
本実証試験では、計70点の発振点からなる2D Walk-away VSPを採用した。55000lbsバイブロサイス2台の同時発振により十分な発振エネルギーを確保するとともに、同一発振点で13回のスイープを行い、さらなる発振エネルギーの向上を図った。DASデータは1ミリ秒および4.98mの時間・空間サンプリングで収録した。観測井はINPEXの既存生産井を利用した。同井は多くの区間で45度の坑井傾斜を持ち、この点では同区間で比較的良好なカップリングが期待されるものの、一方で同区間では9-1/2”ケーシング、7”ライナー、3-1/2”チュービング、および1-1/2”CTが光ファイバーと地層の間に設置されていることになり、カップリングの弱さ、およびそれに起因するシグナル/ノイズ比の低さが懸念された。
同一の発振点で取得された3種類のVSPショットギャザー例を図に示す。左図は1スイープでのショットギャザーである。チューブウェーブノイズや浅部でのリンギングノイズが大きいものの、1スイープの記録にも関わらずP波の直達初動が確認できる。中図は13スイープを重合したショットギャザーである。重合効果によりシグナル/ノイズ比が向上し、P波直達初動が左図に比べて明瞭になっているものの、反射波は依然不明瞭である。右図はさらにチューブウェーブノイズ除去を施したショットギャザーである。適切な処理を適用しノイズを除去しシグナル/ノイズ比をさらに改善することで、直達初動のみならず、P波反射波やP-S変換波も確認できる。
Inside CT法によるDAS-VSPではデータの質が最大の懸念点であり、特に本実証試験フィールドのように、地下地層の特性により反射波イベントが現れにくいフィールドであっても、直達初動、反射波ともに、許容できるシグナル/ノイズ比をもって取得できることを確認できたことは本実証試験の大きな成果といえる。一方、カップリングメカニズムがないInside CT法ではチューブウェーブノイズをはじめとするノイズが大きいため、きわめて密な受振点間隔で広範囲にわたりデータが取得できるDAS計測の特徴をいかし、通常のジオフォン-VSPでは適用しないようなデータ処理によるシグナル/ノイズ比の向上が必須といえる。
謝辞:本現場実証試験は、経済産業省から二酸化炭素地中貯留技術研究組合が委託された「安全なCCS実施のためのCO2貯留技術の研究開発事業」の一環として実施した。データの公表を許可いただいた二酸化炭素地中貯留技術研究組合とINPEXに対し感謝の意を表します。
DAS-VSPを実施するにあたり観測坑内に光ファイバーを設置する必要があるが、既存実証試験では、取得されるデータの質を鑑みて、現時点で選択可能な設置方法のうちBehind CSG法およびAlong TBG法が主として採用されてきた。一方、Inside CT法には、ファイバーケーブルを坑内に展開する際の破断リスクが小さい、坑底温度/圧力センサーも同時に展開できる、および、既存井も観測井として使用できる、といった前者にない利点があり、同方式によるDAS-VSP記録の品質次第では、長期モニタリングを目的とした光ファイバー設置手段の有効な手法となりえると考えられる。そこで、国際石油開発帝石株式会社(以下、INPEX)は、経済産業省による「安全なCCS実施のためのCO2貯留技術の研究開発事業」を受託した二酸化炭素地中貯留技術研究組合の平成29年度研究活動の一環として、2017年8月に、Inside CT方式でのDAS-VSP(Inside CT-DAS-VSP)実証試験を実施した。本試験結果とそれら既存事例の結果とを併せることで、将来のモニタリング計画の検討材料となることが期待される。
本実証試験では、計70点の発振点からなる2D Walk-away VSPを採用した。55000lbsバイブロサイス2台の同時発振により十分な発振エネルギーを確保するとともに、同一発振点で13回のスイープを行い、さらなる発振エネルギーの向上を図った。DASデータは1ミリ秒および4.98mの時間・空間サンプリングで収録した。観測井はINPEXの既存生産井を利用した。同井は多くの区間で45度の坑井傾斜を持ち、この点では同区間で比較的良好なカップリングが期待されるものの、一方で同区間では9-1/2”ケーシング、7”ライナー、3-1/2”チュービング、および1-1/2”CTが光ファイバーと地層の間に設置されていることになり、カップリングの弱さ、およびそれに起因するシグナル/ノイズ比の低さが懸念された。
同一の発振点で取得された3種類のVSPショットギャザー例を図に示す。左図は1スイープでのショットギャザーである。チューブウェーブノイズや浅部でのリンギングノイズが大きいものの、1スイープの記録にも関わらずP波の直達初動が確認できる。中図は13スイープを重合したショットギャザーである。重合効果によりシグナル/ノイズ比が向上し、P波直達初動が左図に比べて明瞭になっているものの、反射波は依然不明瞭である。右図はさらにチューブウェーブノイズ除去を施したショットギャザーである。適切な処理を適用しノイズを除去しシグナル/ノイズ比をさらに改善することで、直達初動のみならず、P波反射波やP-S変換波も確認できる。
Inside CT法によるDAS-VSPではデータの質が最大の懸念点であり、特に本実証試験フィールドのように、地下地層の特性により反射波イベントが現れにくいフィールドであっても、直達初動、反射波ともに、許容できるシグナル/ノイズ比をもって取得できることを確認できたことは本実証試験の大きな成果といえる。一方、カップリングメカニズムがないInside CT法ではチューブウェーブノイズをはじめとするノイズが大きいため、きわめて密な受振点間隔で広範囲にわたりデータが取得できるDAS計測の特徴をいかし、通常のジオフォン-VSPでは適用しないようなデータ処理によるシグナル/ノイズ比の向上が必須といえる。
謝辞:本現場実証試験は、経済産業省から二酸化炭素地中貯留技術研究組合が委託された「安全なCCS実施のためのCO2貯留技術の研究開発事業」の一環として実施した。データの公表を許可いただいた二酸化炭素地中貯留技術研究組合とINPEXに対し感謝の意を表します。