10:45 〜 11:00
[HTT16-01] UAVリモートセンシングに基づく米の食味の推定とグラフ化
キーワード:ドローン、光合成、持続可能性
1 はじめに
持続可能な農業は,農業従事者の高齢化と後継者不足が深刻な日本における喫緊の課題である。その中で,Unmanned Aerial Vehicle (UAV) いわゆるドローンを用いたリモートセンシングは,農作物の収量・品質の向上,環境負荷の軽減に貢献できる重要な課題であるとともに,植生・環境研究にも適用可能な技術である。
米の品質において,食味は重要な要素の一つである。食味は主にアミロース含有率(以降,アミロースとする)と玄米タンパク含有率(以降,タンパクとする)に左右され,一般に,デンプンの中のアミロースが低く,タンパクが低いと食味は良くなる。アミロースは,品種や登熟期の気温の影響を強く受けることが明らかにされている。一方で,タンパクは窒素条件の影響を強く受けるため,施肥などの栽培管理が食味向上のためには必要となる。
リモートセンシングによるタンパク推定は,日本以外での先行研究はない。日本の水稲栽培における食味の重要性の高さは,世界的に見ても稀であり,この味へのこだわりは日本の水稲栽培の大きな特徴であるといえる。
そこで,本研究では,UAVリモートセンシングによる水稲モニタリングを他年次,他地域で行い,タンパク推定モデルの導出と検証を行った。また,推定タンパクと気温データを用い,米の味のグラフ化を行った結果を報告する。
2 研究手法
解析には,2地域(千葉試験地,埼玉試験地),3品種(コシヒカリ,ふさおとめ,ふさこがね)を対象としたUAV観測データと気温データを使用した。1kmメッシュ農業気象データの日単位の日平均気温を使用した。
UAVで撮影した画像からSfM/MVSソフトウェアPhotoScan Professional v1.2(Agisoft社)を用いて,オルソモザイク画像,Digital Surface Model(DSM)を作成した。近赤外撮影用カメラで撮影した画像は専用ソフト(Yubaflex3.0)で放射輝度に変換後,オルソモザイクを作成し,NDVIをはじめとした植生指数の計算を行った。なお本研究のNDVIは,NDVIが0以上を植生として,土壌,水域を排除したものを解析に使用した。
3 結果・考察
出穂期NDVIと登熟期の平均気温を説明変数とし,実測のタンパクを目的変数とした重回帰分析から下記の重回帰式を品種ごとに導出した。
PC = 15.663∙NDVI - 0.085∙T + 4.329 (コシヒカリ)
PC = 14.506∙NDVI - 0.192∙T + 7.816 (ふさおとめ) (1)
PC = 11.944∙NDVI - 0.071∙T + 5.473 (ふさこがね)
ここで,PC:タンパク(%),NDVI:出穂期NDVI,T:登熟期の平均気温である。なお,コシヒカリでは,出穂期から5~20日後,ふさおとめ・ふさこがねでは,出穂期から0~20日後の平均気温を用いた時,タンパクと最も相関が高くなった。
式(1)に示した重回帰式は,NDVIで出穂期の稲体窒素含有率を評価し,登熟期の気温で子実への同化産物の輸送効率を評価していると考えた。
重回帰分析で得られた登熟期の気温のP値(確率変数)は,コシヒカリ:0.302,ふさおとめ:0.060,ふさこがね:0.516に対して,出穂期のNDVIのP値は,コシヒカリ:0.008,ふさおとめ:0.0007,ふさこがね:0.0038となった。登熟期の気温が玄米タンパクに与える影響は,出穂期のNDVIがタンパクに与える影響よりも,小さいことを示し,窒素条件の影響を強く受けるとする既報と整合的である。
Fig.1に,推定タンパクと登熟期の平均気温の相関を示す。この図は相関関係を示すものではなく,米の味の相対評価を示すものと考えられる。タンパクは米の粘りに関わり,タンパクが高いほど,米の粘りがなくなる。アミロース含有率は米硬さに関わり,登熟期の気温が高くなるほど,アミロース含有率は低くなり,米が柔らかくなる。よって,Fig.1では,縦軸で,米の硬さ,横軸で米の粘りを評価していると解釈することができる。
持続可能な農業は,農業従事者の高齢化と後継者不足が深刻な日本における喫緊の課題である。その中で,Unmanned Aerial Vehicle (UAV) いわゆるドローンを用いたリモートセンシングは,農作物の収量・品質の向上,環境負荷の軽減に貢献できる重要な課題であるとともに,植生・環境研究にも適用可能な技術である。
米の品質において,食味は重要な要素の一つである。食味は主にアミロース含有率(以降,アミロースとする)と玄米タンパク含有率(以降,タンパクとする)に左右され,一般に,デンプンの中のアミロースが低く,タンパクが低いと食味は良くなる。アミロースは,品種や登熟期の気温の影響を強く受けることが明らかにされている。一方で,タンパクは窒素条件の影響を強く受けるため,施肥などの栽培管理が食味向上のためには必要となる。
リモートセンシングによるタンパク推定は,日本以外での先行研究はない。日本の水稲栽培における食味の重要性の高さは,世界的に見ても稀であり,この味へのこだわりは日本の水稲栽培の大きな特徴であるといえる。
そこで,本研究では,UAVリモートセンシングによる水稲モニタリングを他年次,他地域で行い,タンパク推定モデルの導出と検証を行った。また,推定タンパクと気温データを用い,米の味のグラフ化を行った結果を報告する。
2 研究手法
解析には,2地域(千葉試験地,埼玉試験地),3品種(コシヒカリ,ふさおとめ,ふさこがね)を対象としたUAV観測データと気温データを使用した。1kmメッシュ農業気象データの日単位の日平均気温を使用した。
UAVで撮影した画像からSfM/MVSソフトウェアPhotoScan Professional v1.2(Agisoft社)を用いて,オルソモザイク画像,Digital Surface Model(DSM)を作成した。近赤外撮影用カメラで撮影した画像は専用ソフト(Yubaflex3.0)で放射輝度に変換後,オルソモザイクを作成し,NDVIをはじめとした植生指数の計算を行った。なお本研究のNDVIは,NDVIが0以上を植生として,土壌,水域を排除したものを解析に使用した。
3 結果・考察
出穂期NDVIと登熟期の平均気温を説明変数とし,実測のタンパクを目的変数とした重回帰分析から下記の重回帰式を品種ごとに導出した。
PC = 15.663∙NDVI - 0.085∙T + 4.329 (コシヒカリ)
PC = 14.506∙NDVI - 0.192∙T + 7.816 (ふさおとめ) (1)
PC = 11.944∙NDVI - 0.071∙T + 5.473 (ふさこがね)
ここで,PC:タンパク(%),NDVI:出穂期NDVI,T:登熟期の平均気温である。なお,コシヒカリでは,出穂期から5~20日後,ふさおとめ・ふさこがねでは,出穂期から0~20日後の平均気温を用いた時,タンパクと最も相関が高くなった。
式(1)に示した重回帰式は,NDVIで出穂期の稲体窒素含有率を評価し,登熟期の気温で子実への同化産物の輸送効率を評価していると考えた。
重回帰分析で得られた登熟期の気温のP値(確率変数)は,コシヒカリ:0.302,ふさおとめ:0.060,ふさこがね:0.516に対して,出穂期のNDVIのP値は,コシヒカリ:0.008,ふさおとめ:0.0007,ふさこがね:0.0038となった。登熟期の気温が玄米タンパクに与える影響は,出穂期のNDVIがタンパクに与える影響よりも,小さいことを示し,窒素条件の影響を強く受けるとする既報と整合的である。
Fig.1に,推定タンパクと登熟期の平均気温の相関を示す。この図は相関関係を示すものではなく,米の味の相対評価を示すものと考えられる。タンパクは米の粘りに関わり,タンパクが高いほど,米の粘りがなくなる。アミロース含有率は米硬さに関わり,登熟期の気温が高くなるほど,アミロース含有率は低くなり,米が柔らかくなる。よって,Fig.1では,縦軸で,米の硬さ,横軸で米の粘りを評価していると解釈することができる。