日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境リモートセンシング

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 202 (幕張メッセ国際会議場 2F)

コンビーナ:島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学、共同)、石内 鉄平(宮城大学)、座長:島崎 彦⼈(独⽴⾏政法⼈国⽴⾼等専⾨学校機構 ⽊更津⼯業⾼等専⾨学校)

11:45 〜 12:00

[HTT16-05] 衛星画像によるバングラディシュの干潟面積変化の推定

*宮﨑 瑞菜1根来 晃佑1波多 俊太郎2Lahrita Lucy3Végh Lea2山脇 啓輔2川俣 大志1,4成瀬 延康1,4,5高橋 幸弘1,6 (1.北海道大学 グローバルサイエンスキャンパス、2.北海道大学 大学院環境科学院、3.北海道大学 大学院農学院、4.北海道大学 高等教育推進機構、5.滋賀医科大学、6.北海道大学 理学研究院)

キーワード:バングラデシュ、リモートセンシング、干潟

干潟は水質の浄化や生物多様性の維持、海岸線の保護などの役割を持つため、干潟の面積変化は海洋生態系に大きな影響を与える。しかし、干潟面積の変化の主要因は、人為的なもののほかに、流入河川の運ぶ土砂量や沿岸海流などと地域ごとに異なる。そのため、海洋生態系への影響を予測するためには、干潟の面積変化の要因をそれぞれの地域ごとに、定期的に調査することが重要になってくる。しかし、現地で踏破する方法は時間的、経済的に大きな負担がかかり、そのため特に発展途上国では実施が困難な状況にある。そこで、本研究では入手しやすい衛星画像を用いた、干潟面積の時間的推移を簡便に推定するための新しい手法を提案する。
先行研究では現場での潮位測定及び過去の潮位記録を基に、PALSARとLandsatなどの衛星画像を用い海岸線を求め、そこから干潟の面積を計算している。しかし、潮位測定を定期的に行っていない地域も少なくなく、また検潮所が干潟の場所から遠く離れているために精度が保証できない場合もある。また干潟の海岸線の位置は目視で判定をすることが多く、その場合データの客観性に疑問が残る。
バングラデシュのJahajir char島では2007年から2013年の6年間に島の面積が約2倍に増加しており、またこの島には干潟があることが知られている。本研究ではJahajir charの干潟の年ごとの面積変化を推定することで、リモートセンシングにより干潟の面積変化を把握できるような簡便な手法の確立を目指す。
本研究では、距離の離れた検潮所から得た干潮・満潮時刻のデータを利用して、Landsatの衛星画像から算出した各種指標や潮位による補正を駆使しながら干潟の面積を求める。まず、手始めに代表的な水指数(mNDWI)を用いた場合の干潟の面積を計算した。ここで海岸線を見分ける閾値として高潮線付近の時は0.09を使った場合、文献値の島の面積とほぼ同じとなった。一方、低潮線を抽出する際には干潮時の水分を多く含んだ泥地を検出するために、水との境界としてよく用いられる閾値として0.30とした。干潮と満潮の面積の差を干潟の面積と定義した場合、2007年には干潟は29.3km2だったが、2013年には13.4km2に減少した。しかし、この解析には二つの課題がある。一つは、衛星画像の撮影時刻と実際の干潮・満潮の時刻の差を考慮できていない点である。そのため様々な時刻に撮影された衛星画像から求めた干潟の面積とその時刻の潮位をプロットしたところ、図のような相関が得られた。この相関から補正を行えば、任意の撮影時刻の干潟の面積を求められる。もう一つの課題は、水指数を用いた場合、潮位の時刻により閾値が変動してしまう点にある。これは、他の指数例えば、土壌指数や植生指数を併用あるいは比較することにより解決が可能である。
上記補正を含む複合的な解析を行えば、衛星画像の撮影時刻に影響されずに干潟の面積を正確に求めることができ、地球温暖化により影響をうける陸地の面積の定量的把握にも活かすことができるものと思われる。

この研究は、JSTグローバルサイエンスキャンパスの北大スーパーサイエンティストプログラム(SSP)で行われました。