日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境リモートセンシング

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学、共同)、石内 鉄平(宮城大学)

[HTT16-P03] 水中ワカメのスペクトル測定に基づいた衛星リモートセンシングによるワカメの生息域特定

*北井 朝子1種谷 渉1井上 夏美2山崎 開平3H V Deepak2川俣 大志1,4成瀬 延康1,4,5高橋 幸弘1,6 (1.北海道大学 グローバルサイエンスキャンパス、2.北海道大学 大学院生命科学院、3.北海道大学 大学院環境科学院、4.北海道大学 高等教育推進機構、5.滋賀医科大学、6.北海道大学 理学研究院)

キーワード:ワカメ、水中反射スペクトル、リモートセンシング

ワカメ(Undaria pinnatifida)は、国際自然保護連合の種の保全委員会が定めた世界の侵略的外来種ワースト100のうちの一つに指定されている。ワカメの侵入により現地生態系が破壊されたり、漁業に被害がもたらされたりする例も発生しており、ニュージーランドではロブスターの養殖所が閉鎖に追い込まれた事例もある。爆発的に拡大するワカメの生息域を正確に特定するために、これまで実地調査とリモートセンシングによる取り組みがなされている。前者は、漁師や、地元民からの聞き取り調査と、ドローン、船舶、ダイビングによる観測調査がなされているが、時間や費用がかかり空間的にも限定的な調査となってしまう。

この欠点を克服する方法として衛星リモートセンシングによる広域調査が期待されている。従来の衛星リモートセンシングでは、1)海水温と海流調査から、ワカメの生息域を推定する方法や、2)各種指数を利用し藻場をモニタリングすることなどが取り組まれている。しかし、1)の手法は間接的な推定であり、具体的なワカメの生息域の特定は難しい。一方、2)の手法も、現地海域の消散係数(海水による光の減衰の波長依存性)が既知でなければ藻場を識別できない可能性がある。また、これらの研究では、地上計測した海藻や海草のスペクトルを仮定しており、衛星画像への海水の影響を十分に考慮していない点や、藻場は特定できてもワカメの生息域だけを区別できていない点にも課題がある。

上記問題を解決するため、本研究では海水中の生きたワカメの反射スペクトルを実測し、スペクトルの水深依存性を明らかにすることで、ワカメの生息域の判別に敏感な衛星リモートセンシング方法の確立を目指す。

水中のワカメの反射スペクトルの水深依存性については、新江ノ島水族館協力のもと、次のような計測を行った。ハロゲンランプ光を水槽外部から照射し、水中に各深さ(10−90cm)に沈めた白色板と、その水深でのワカメの反射スペクトルを380−1050nmの範囲で小型分光器を用いて実測した。その結果、580nm以下および900nm以上の光は水深30cmを超えると観測はほとんど出来なかった。よって580−900nmの波長範囲のバンドを用いたリモートセンシングが必須であることがわかった。また、白板の反射強度の水深依存性から30cmで測定したワカメのスペクトルを基準に90cmまでのワカメのスペクトルを求めたところ、水深90cmでも十分にワカメに特徴的なスペクトルがみられた。こうした点や季節に伴う藻場の変化を利用すれば、他の褐藻と区別したリモートセンシングが可能になる。

謝辞
実験を実施するにあたり、江ノ島水族館の皆様のご協力を頂きました。この研究は、JSTグローバルサイエンスキャンパスの北大スーパーサイエンティストプログラム(SSP)で行われました。