日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境リモートセンシング

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学、共同)、石内 鉄平(宮城大学)

[HTT16-P05] チロエ島内海(チリ)におけるリモートセンシングから得られた赤潮分布と鮭養殖規模との相関

*吉野 さくら1山下 凌平1長尾 海星1村橋 究理基2Roshanianafard Ali3川俣 大志1成瀬 延康1,4,5高橋 幸弘1,6 (1.北海道大学 グローバルサイエンスキャンパス、2.北海道大学 大学院理学院、3.北海道大学 大学院農学院、4.北海道大学 高等教育推進機構、5.滋賀医科大学、6.北海道大学 理学研究院)

キーワード:赤潮、チロエ島、鮭養殖、栄養塩

チリでは、1980年代後半から沿岸及内海域にて貝や鮭などの水産養殖業が活発に行なわれており、中でも養殖鮭の漁獲高はノルウェーに次いで現在世界第2位である。一方で、チリ沿岸では、赤潮が養殖鮭の大量死や品質低下を引き起こし、2016年の鮭被害は全養殖鮭漁獲量の約20% (約10万t) に相当するほどの大問題となっている。

赤潮は海中の栄養塩の増加・海水温度の上昇による植物プランクトンの大量発生が原因であり、赤潮を誘引する沿岸部の人間活動は複数ある。Anderson. D、Rensel. JらはHarmful Algal Blooms Assessing Chile’s Historic HAB Events of 2016 にて、チリのチロエ島内海は特に赤潮による鮭の被害が大きく、そこへの栄養塩の流入は次の四つに起因すると指摘した。即ち、鮭養殖, 周辺の都市の生活排水, 海産物処理工場からの排水, フィヨルドからの河川の流入である。しかしながら、その主要因ですらいまだ特定されていない。

そこで、本研究ではチロエ島内海において、リモートセンシングにより赤潮の発生日数並びに面積を決定し、前述の鮭養殖や周辺都市の生活排水等との相関を求め、チロエ島内海における赤潮発生の主原因を特定することを目的とする。

赤潮発生日数及面積の決定にはNASA worldviewから取得できるクロロフィルAの濃度の月平均画像を使用し、養殖鮭の月間漁獲量は養殖機関SalmonChileの発表統計を利用した。周辺都市の生活排水量の推移は、調査地域の下水処理では栄養塩は除去されないことから周辺都市の人口推移と対応すると考え、National Statistics Institute of Chileが公表する人口予想を遠用した。

例えば、毎月の養殖鮭漁獲高と赤潮発生日数との比較では良い相関を示した (相関係数0.64)。両者には、1) 赤潮による海水の酸素濃度減少が鮭の大量死を引き起こして漁獲高を減少させる一方で、2) 養殖量の増加に伴う餌の増加により内海沿岸域の富栄養化が赤潮を多発させるという二つの相反関係が考えられ、今回の結果はチロエ内海に於いては後者が優位であることを支持する。他の相関解析結果を含め、詳細は講演にて発表する。


本研究は日本科学技術振興機構 (JST) のグローバルサイエンスキャンパスの下で、北大スーパーサイエンティストプログラム (SSP)の一環として実施された。ここに謝意を表する。