日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2018年5月24日(木) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学空間情報科学研究センター)、座長:小荒井 衛(茨城大学)、田中 一成(大阪工業大学)

09:30 〜 09:45

[HTT17-03] GISとRによるPM2.5の大気滞留時間の解析

★招待講演

*山川 純次1 (1.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:GIS、クリギング、gstat on R、自己相関解析、FOSS4G、PM2.5

岡山県南部におけるPM2.5の濃度変化をGISと地理統計学的手法および時系列解析手法を用いて解析した。データ取得期間は2017年の6月上旬から8月下旬まで,解析期間は7月下旬の5日間である。

解析に必要なPM2.5濃度の観測データは岡山県の環境データ公開ウェブサイトから取得した。解析に必要な地理情報データは政府系オープン・データであるJPGIS(国土地理院, 2017)を使用した。GISはFOSS4G (Open Source Geospatial Foundation)のQGIS (QGIS Development Team, 2016)を使用した。地理統計解析と時系列解析にはR (R core team, 2017)を使用した。
まずPM2.5の観測データから対象地域全体の濃度を推定した。そして推定濃度の時系列変化を自己相関解析して変動周期を検討した。データ取得期間中は黄砂の飛来や台風の通過などにより気象が急激に変化したが,7月下旬の5日間は比較的安定した気象だったので,この期間におけるPM2.5の濃度変動周期を検討した。その結果,PM2.5の濃度に約45時間の変動周期を見出した。これはPM2.5の濃度が1日では基底値に戻らないことを示している。

PM2.5の濃度変化に大きな影響を持つと考えらえている気象や交通量そして生物活動は約1日の周期であることを考慮すると,今回示された約45時間の変動周期は,この地域でPM2.5が大気中に蓄積される可能性を示すものと考えられる。PM2.5の高濃度化を防ぐためには,この周期すなわち大気滞留期間を考慮する必要があるが,この期間は地形や地物と気象等によって影響されるので地域毎に推定する必要がある。

GISは地球環境データの地理統計解析に必要となる地理情報データの準備と解析結果の地図表現に有効利用できる。地球惑星科学の研究において更なる普及が望まれる。