日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2018年5月22日(火) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、座長:中野 孝教(総合地球環境学研究所)

09:00 〜 09:15

[HTT18-01] 環境トレーサビリティーを実現する多元素同位体手法

*陀安 一郎1藤吉 麗1藪崎 志穂1SHIN Ki-Cheol1中野 孝教1谷口 真人1 (1.総合地球環境学研究所)

キーワード:安定同位体、環境トレーサビリティー

水、大気、生物、土壌など生態系を構成する種々の要素のなかには、元素の安定同位体比という指紋が内在されている。この指紋情報がもつトレーサビリティー機能を用いると、さまざまな地域や時間のスケールを対象とする地球環境問題の解決に資する研究を行うことができる可能性がある。元素の安定同位体比は、元素の濃度とともに、環境中の物質の流れを追跡するとともに、生態系の構造を記述することに用いられる。多元素の安定同位体比の時空間変動は、地域レベルから地球規模に及ぶ地球システムを研究するために使用することができる。この情報は、さらに人々が水、食糧、環境保全などの重要な意思決定を行う上で活用することができる可能性があり、これらは人間社会の持続可能性にとっても活用しうる。

総合地球環境学研究所で行なわれている「環境研究における同位体を用いた環境トレーサビリティー手法の提案と有効性の検証」の研究においては、環境研究において環境トレーサビリティーの概念をどのように利用するかについての方法論を確立することを目的としている。複数の元素とその同位体比の使用した「マルチアイソスケープ」のマッピングと、アンケートなどの社会的調査の組み合わせを展開し、環境トレーサビリティ手法を環境問題の解決にどのように活用するかを検討する。我々は、学際的プロセスにおけるトレーサビリティ手法の役割と利用可能性は対象とする関係者で異なり、「マルチアイソスケープ」の共同制作は地域環境の変化を理解し説明するのに効果的な結合ツールとして機能すると考えている。そして、マルチアイソトープ情報がどの場面で有効であるかについて調査している。研究地域は、福井県大野市、愛媛県西条市、岩手県上閉伊郡大槌町、山梨県南都留郡忍野村、兵庫県千種川流域、滋賀県、フィリピンなどであり、本発表ではその概要について説明する。