日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2018年5月22日(火) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、座長:中野 孝教(総合地球環境学研究所)

09:45 〜 10:00

[HTT18-04] 京阪神地域における降水中の硫酸イオンの硫黄同位体比による大気への硫黄の起源推定

*横尾 頼子1金丸 雅人1石川 尚人2 (1.同志社大学理工学部、2.京都大学院人間・環境学研究科)

キーワード:硫黄同位体、降水、非海塩性硫酸

酸性雨の原因の一つは降水中に含まれる硫酸であり,その供給源を推定するには降水中に含まれるイオン濃度の測定だけでは難しい.硫黄には4種類の同位体があり,その同位体比(34S/32S)は供給源特有の値を有している. そこで本研究では,京阪神地域の降水中の硫酸イオンの硫黄同位体比を調べ,この地域における大気への硫黄の起源の推定を行った.
京都大学(京都市左京区)と同志社大学(京都府京田辺市),同志社香里中・高校(大阪府寝屋川市),西宮今津高校(兵庫県西宮市)で2007年と2008年に1ヶ月毎に採取した降水を0.2 µmメンブレンフィルターでろ過し,BaCl2溶液とHClを添加して,0.8 µmメンブレンフィルターでろ過しBaSO4を回収した.硫黄同位体比は軽元素安定同位体比用質量分析計で,イオン濃度はイオンクロマトグラフィーで測定した.硫黄同位体比は標準物質(Canyon Diablo Troilite)に対する千分率偏差(δ34S)で表す.
降水のNaがすべて海塩由来成分であるとして,降水中の非海塩性(nss)SO42-のδ34Sを海水のイオン組成比とδ34Sから求めると,nss-δ34Sにおいて夏に低く,春と冬に高い傾向がみられた.京阪神4地点の降水中のδ34Sとnss-δ34Sの差は小さく,SO42-については海塩の影響は小さい.
国内で使用される石油燃焼起源のδ34Sの平均値は低いことから,夏季の低いnss-δ34Sは京阪神地域の nssSO42-に石油燃焼起源の硫黄が含まれることを示す.春先と冬季にはnss-SO42-の降下量が多く, nss-δ34Sは高い.この結果は東アジア地域での石炭の燃焼により高いnss-δ34Sを示すSO42-が付加されたためと考えられる.