日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2018年5月22日(火) 13:45 〜 15:15 103 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、座長:木庭 啓介(京都大学)

14:45 〜 15:00

[HTT18-17] 渓流水中のCaおよびSrに対する大気降下物・火山灰・母岩の寄与評価−チャートが分布する集水域におけるエンドメンバーの検討

*越川 昌美1渡邊 未来1村田 智吉1高松 武次郎1三浦 真吾1SHIN Ki-Cheol2中野 孝教2 (1.国立環境研究所、2.総合地球環境学研究所)

キーワード:火山灰、Sr同位体、渓流水、Ca供給源、チャート

森林土壌のCa供給は、生態系の酸性化抑制と生物への養分供給に重要である。日本では、森林土壌中に混入している火山灰が、Ca 供給に大きく寄与していると考えられるが、その実態は不明な点が多い。演者らは、Ca 供給機能が低い地質ほど火山灰の影響が強く現れるとの仮説を立て、風化が遅くCa 供給機能が低い岩石であるチャート(堆積岩の一種)の分布域における渓流水中のCaおよびSrの起源解析を進めている。

昨年の発表では、チャートが存在し、かつ赤城山に由来する火山灰が分布する栃木県雨巻山地域において、渓流水・土壌・岩石の主要元素濃度とSr同位体比を観測し、渓流水中Srの起源解析を試みた結果を報告した。しかし、エンドメンバーのSr同位体比として、1)大気降下物由来Srは茨城県筑波山の実測値、2)火山灰由来Srは赤城山火山岩の文献値、3)岩石風化由来Srは全分解液の実測値のうち最低値、を使用した仮の解析であった。

そこで、より信頼できるエンドメンバーを得るために、1)大気降下物由来Srは現地の降水1年分、2)火山灰由来Srは現地土壌の全分解液およびシュウ酸抽出液、3)岩石風化由来Srは岩石粉末の酢酸アンモニウム抽出液、の分析を計画し、その一部の結果を得たので報告する。