日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2018年5月24日(木) 09:00 〜 10:30 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、共同)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、座長:高橋 亨尾西 恭亮

09:45 〜 10:00

[HTT19-04] 小型模擬堤防を用いた越水実験に伴う多点同時通電による3次元比抵抗モニタリング

*山下 善弘1小林 剛1斎藤 秀樹1杉井 俊夫2小高 猛司3前田 健一4崔 瑛5 (1.応用地質株式会社、2.中部大学、3.名城大学、4.名古屋工業大学、5.横浜国立大学)

キーワード:比抵抗、堤防越流、モニタリング

近年、短期間に間断なく到来する大型台風の頻発や、線状降水帯による長時間におよぶ集中豪雨など、これまでにない外力の発生により堤防の越流が各地で発生している。本研究では、越流発生時の河川堤防の挙動を観察することを目的に、約5分の1のスケールの小型堤防を用いて越水現象の実験を行った。本報告では、この越水実験に伴って3次元比抵抗探査を小型堤防上で行った結果について報告する。越水実験では、天端高1m、天端幅0.5m、敷幅3.5m、のり勾配1割5分、長さ約9mの小型堤防を庄内川河川敷に設置し、堤防表側に貯水池を設けて庄内川より河川水を汲み上げて水位を制御し、小型堤防へ外水位の負荷を与えた。なお実験を行った地点が河口近くで汽水域であったため、貯水池内の水は塩分を含んでいた。小型堤防の上部には人工降雨装置を設けて、適時貯水池内の水を小型堤防上部より散水できるようにした。実験では貯水池内の水位を天端高まで上昇させて小型堤防を越水させ、観察を行った。この越水実験時に小型堤防上で行った計測項目のひとつとして、堤体内への浸透現象を把握することを目的として3次元比抵抗モニタリングを実施した。比抵抗の測定では、小型堤防全体をカバーできるよう、堤防を横断する方向に32電極の測線を6本、これらの測線と直交する方向に天端とのり面上に32電極の測線を2本設置した。測定ではこれら8測線で合計3072データの測定を一定の時間間隔で繰り返した。本研究ではできるだけ細かい時間分解能を実現することを目的に、多点同時通電技術による高速の測定を実施した。測定には、電流送信器を8台・電位測定器8台を有するシステムを用いて測定を実施し、約20分間隔で一連の測定を繰り返した。3次元比抵抗モニタリングの結果、人工降雨や外水位上昇に伴う堤体内の比抵抗変化を明瞭に捉えることが出来た。貯水池内の水が塩水であったことも比抵抗変化を明瞭にした一因ではあったが、3次元的に測定、解析、可視化することにより、外水位変化による堤体内の比抵抗変化をより空間的に捉えることができた。本研究は国土交通省中部地方整備局庄内川河川事務所の協力を得た。ここに謝意を表します。