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[HTT19-06] 稠密GPRデータを用いた3次元マイグレーションによる古墳内部イメージング
キーワード:地中レーダ、マイグレーション、考古学
非破壊探査の一つであるGPRはこれまで遺跡調査においてしばしば活用されてきた。GPRは分解能が高いので、測線を面的に稠密配置することによって、地下空間を3次元的にかつ詳細に可視化することが期待できる。しかし、効果的に3次元解析をする場合には、GPRアンテナでスキャンするだけでなく、GPRアンテナの位置を正確に測量しておく必要があったため、あまりにも測線数が多いと現実的には限界があった。八洲開発では、遺跡調査サービスを始めるため、九州で初めてRTK-GNSSとHS350と搭載したGPRシステムを導入した。RTK-GNSSは水平方向に1cm以内、鉛直方向に1.5cm以内でGPRアンテナの位置をリアルタイムに決定することが可能である。HS-350はGSSI社のGPRアンテナで、リアルタイムサンプリングを採用し、GPR波形を数百回スタッキングすることによりS/N比を向上させたGPRアンテナである。両装置は同期するので、効果的な測定作業が実現する。著者らは、このシステムを用いて熊本県山鹿市にある岩原双子塚古墳群の馬不向古墳を調査対象に、円墳の頂上部を中心に約1.9°刻みで放射状に円墳を横断するGPR探査を実施した。作業時間は約4時間であった。円墳内部には、遺体が埋葬された石棺が埋設されていると考えられており、GPRはそれを取り囲むように測定している。解析では、地形面で変わる電波の放射方向を計算し、頂上部を中心に放射状に360°配置した測線のデータを用いて3次元のディフラクションスタッキングを行った。解析の結果、墳丘の頂上部より深さ1.2~1.7m付近に顕著な反射体が分布していることがわかった。この反射体周辺のみを対象に、水平方向のグリッドサイズを4cm、深度方向のグリッドサイズを5cmとして、詳細なイメージングを行った。反射体の形状を考察した結果、石棺の形状が複雑になっていることから、盗掘された跡である可能性を推定した。