日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2018年5月24日(木) 13:45 〜 15:15 101 (幕張メッセ国際会議場 1F)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、共同)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、座長:横田 俊之青池 邦夫

13:45 〜 14:00

[HTT19-07] スパースモデリングの地盤物理探査への活用

★招待講演

*三木 茂1吉川 猛1 (1.基礎地盤コンサルタンツ株式会社)

キーワード:スパースモデリング、物理探査、逆解析

スパースモデリングは,近年,様々な分野で注目されているデータ処理技術,最適化手法の一つであり,少ないデータから鮮明な再構成像が得られる特徴がある.劣決定問題において,解のスパース性を利用して,未知数の数を減らして逆問題を解く手法である.実際の問題においては,スパース解(ゼロ値)となる解の個数や位置は未知であり,L0ノルムから直接的に最適解を求めることは困難である.そこで,スパースモデリングでは,L1ノルムを最小化し,積極的にスパース解を選択することで最適解を得ている.劣決定問題となる線形最小二乗法の場合,解の安定性を向上させるために,正則化項としてL1ノルムを加えたものを目的関数として解くことが一般的である.このLIノルムを正則化項として用いた回帰は,LASSO (Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)と呼ばれている.LASSOを実際に解く方法としては,数々の方法が提案されており,代表的な方法として,FISTA(Fast Iterative Shrinkage Thresholding Algorithm)やADMM(Alternating Direction Method of Multipliers)があげられる.ADMMは,汎用性が高く計算効率の良い方法として利用されている.

 一方,地盤の物性値そのものにスパース性はない.しかし,物性値の空間分布における変化や時間における変化についてはスパース性が期待できる場合がある.例えば,一様な速度層内においては,同一層内の隣接する2点間における速度差は0であり,スパース性が期待できる.層境界を挟んだ2点でのみ値を持つことになる.また,地盤改良などにより,ある範囲の速度が変化する場合,未改良部においては改良前後で速度差は0であり,スパース性が期待できる.改良部でのみ速度差は非0の値を持つこととなる.

 また,天文分野では,とぎれとぎれの観測値からスペクトル解析を行う方法としてスパースモデリングが用いられている.観測値のサンプリングに起因する偽のスペクトルと真のスペクトルを分離する方法として利用されている.スペクトルの殆どの成分が0であり,意味のある信号はわずかであることから,周波数空間ではスパース性が期待できることを利用している.雑音が含まれている観測値から,特性の周波数成分の信号を抽出する技術として,物理探査においても利用できると考えられる.
 本報告では,地震探査屈折法トモグラフィ解析を例に,速度値の空間分布にスパース性を期待する場合と時間変化にスパース性を期待する場合について,ADMMによる定式化を示すとともに,地盤改良を想定したモデル解析について示す.スパースモデルによる解析結果は,重み付き最小二乗法に比較して,改良範囲が明瞭となる解析結果となった.また,スペクトル解析へのスパースモデリングの適用例について,モデル解析結果を示す.