日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG33] 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態

2018年5月20日(日) 13:45 〜 15:15 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:北 和之(茨城大学理学部)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、篠原 厚(大阪大学、共同)、津旨 大輔(一般財団法人 電力中央研究所)、座長:加藤 弘亮(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、北 和之(茨城大学)

14:45 〜 15:00

[MAG33-15] 福島高線量地区における夏季大気セシウム放射能濃度増加とバイオエアロゾル

*北 和之1林 奈穂1南 光太郎1木村 茉央1五十嵐 康人2足立 光司2牧 輝弥3石塚 正秀4大河内 博5古川 純6二宮 和彦7篠原 厚7 (1.茨城大学理学部、2.気象研究所、3.金沢大学、4.香川大学、5.早稲田大学、6.筑波大学、7.大阪大学)

キーワード:福島第一原発事故、放射性セシウム、バイオエアロゾル

平成23年3月の福島第一原発事故により環境中に多量に放出された放射性物質は、大気を通じ広域に拡散し地表、植生、海面へと沈着した。沈着の多い高汚染地区を中心に、現在に至るまで、大気中に事故前を大きく上回る放射性セシウムが観測され続けており、地表・植生からの再飛散によって供給されていると考えられる。この再飛散過程は、速く広範囲に放射性物質の移行・拡散を引き起こす可能性があり、環境中で放射性物質が今後どのように推移するか理解するため、そのメカニズムの解明と飛散フラックスの定量化を目的に研究を続けている。

 我々のグループは、福島県浪江町津島地区に設置したサイトにおいて継続的にサンプリングを実施している。大気中で放射性セシウムはほぼすべてエアロゾルに含まれる形で存在しているが、この放射性セシウムを運ぶ担体となっているエアロゾルとして、夏季から秋季には真菌類胞子などバイオエアロゾル粒子が重要である可能性があることが、バイオエアロゾルのゲノム分析等により明らかになった。そこで、以下のポイントから、菌類、特にキノコ(担子菌)類胞子が、夏季の放射性セシウムの担体として重要か検証している。
津島で採取したキノコ胞子は、大気放射能濃度を説明できる程度の放射性セシウムを含んでいるのか? キノコ胞子の放射性セシウムは、大気エアロゾル試料中のものと同程度に純水により抽出されるのか? 大気放射能濃度の変動は、真菌類胞子とよい正相関を持っているのか?
 昨年夏季~秋季に、いくつものキノコサンプルを津島地区で採取することができ、現在胞子に含まれるセシウム137の放射能の範囲を定量的に見積もっている。さらに、同じ地点で捕集した大気浮遊しているキノコ胞子などバイオエアロゾルを、DAPIで染色して蛍光顕微鏡で計数することにより、その数濃度を見積もっている。並行して、いくつかのキノコサンプルについて胞子中のセシウム137を純水抽出し、その抽出割合を測定している。講演会時には、それらの結果について報告する。

 また、筑波実験測物園において、林内からのキノコ胞子等のバイオエアロゾルの放出フラックスを定量化すべきく、観測システムを構築しつつあり、それについても紹介したい。