[MGI22-P01] アジョイント法による定常トレーサー分布から海洋鉛直拡散係数分布を推定する試み
★招待講演
海洋中の鉛直拡散係数の値は、温度・塩分などのトレーサー分布や、海洋深層循環の強さをコントロールする重要な要素である。近年の研究から、その分布は空間的な非一様性が高いことが明らかになってきているが、分布の詳細や定量的な値についてはよく分かっていない。一方、温度・塩分をはじめとするトレーサー分布についての観測データは近年飛躍的に増加しており、全球をカバーした良質なデータセットが利用可能である。先行研究では、観測データから得られるトレーサー分布の情報から海洋の流速場を逆推定する試みもなされてきている(Wunsch,1996など)。流速場と合わせて、鉛直拡散係数分布についても逆推定した試みもあるが(Ganachaud and Wunsch, 2000)、その3次元分布について詳細に議論した研究は少ないと思われる。本発表では、温度、塩分、炭素同位体分布(Δ14C)の3つのトレーサー分布を用いて、鉛直拡散係数の3次元分布をどの程度逆推定することができるか、その可能性について議論するとともに現段階での試みを紹介する。