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[MGI25-05] 静岡県・安倍川左岸の有東木地区における完新世のマスムーブメント発達史
キーワード:斜面変化、14C年代法、宇宙線生成核種年代法、泥流、海溝型巨大地震
安倍川左岸の巨摩山地中腹に存在する有東木地区(静岡市)では、伝統的なワサビ栽培が盛んである。当地には厚い未固結礫質堆積物が分布し、河成段丘状ないし沖積扇状地状の地形を形成する。これらの礫質堆積物は最も初期に生じた泥流、その後の大規模岩石なだれ、そして最後に生じた土石流によって順次もたらされた。14C年代および原位置宇宙線生成核種年代によれば、これらの斜面変動現象は6.0~3.8 cal ka BPの期間に生じたと考えられる。この時代には古文書や伝承がないため詳細は不明であるが、斜面変動の誘因として駿河-南海トラフに起因する巨大古地震が有力な候補となる。有東木地区のワサビ栽培は、急峻な山地における斜面変動性の地形上に展開してきたものである。この地区は、山間農村における地形発達と農業発達との関係を検討する絶好の機会を与えてくれる。