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[MGI25-06] 山岳地域にみる過去の人為作用とその影響―炭焼きの痕跡を例に―
★招待講演
キーワード:人為作用、炭焼き、森林伐採、景観発達、山岳地域
燃料革命以前、日本で炭焼きが広く行われていたことはよく知られている。こうした森林植生の薪炭林的利用は、主に集落に隣接するいわゆる「里山」(地形的には主に丘陵地)で行われていたというのが一般的理解であろう。事実、現在コナラ林等の二次林で覆われる丘陵地では、過去に使われた炭窯の跡が多数認められる場合がある。しかしながら、同様の炭窯跡は、丘陵地のみならず、「奥山」的領域にも多数分布することが、宮城県内を中心とするいくつかの地域での調査から明らかになってきた。たとえば、奥羽山脈の船形火山群東端に位置する泉ヶ岳(1175m)では、少なくとも標高790m付近まで炭窯跡が確認できる。この事実は、泉ヶ岳の標高800m付近まで、かつて炭焼きのための森林伐採が行われたこと、現在みられる植生は伐採後の植生遷移を経て成立してきたものであることを意味する。実際、炭窯跡の周囲数10m四方の範囲には、陽樹や耐陰性の低い樹種が多数分布している。すなわち、かつての伐採の影響は、数10年経過後も植生景観を特徴づけているといえる。山岳地域の植生を中心とした景観について考察する場合、こうした過去の人為作用の影響に目を向けることも重要と考えられる。