日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI25] 山岳地域の自然環境変動

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科、共同)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、座長:奈良間 千之(新潟大学)

11:00 〜 11:15

[MGI25-08] 林内と林外における消雪日のメタ解析

*藤原 洋一1高瀬 恵次1田中 健二1長野 峻介1 (1.石川県立大学生物資源環境学部)

キーワード:積雪、融雪、森林帯、山岳域、気候変動

樹冠は降雪を遮断することにより、林内の積雪量はオープンスペースのそれよりも少なくなる。しかし、樹体は日射を遮り風速を弱めることから、林内の融雪速度はオープンスペースのそれよりも遅くなるのが普通である。よって、林内の積雪とオープンスペースの積雪のどちらの方が遅くまで残るのかは、気象条件、森林の構造(種類)、地形条件などによって決定されると考えられる。これまで、林内とオープンスペースの積雪・融雪を比較した研究はもちろん存在するが、ある特定の場所を対象とした研究がほとんどであった。そこで、本研究では、林内と林外における消雪日に着目したメタ解析を行い、林内の積雪の方が残る条件、および、オープンスペースの積雪の方が残る条件を明らかにすることを試みた。

林内とオープンスペースにおける積雪・融雪を比較した研究論文を探し、これらの研究結果を整理することで、林内の積雪とオープンスペースの積雪のどちらの方が遅くまで残るかを明らかにすることを試みた。なお、ひと言に森林と言っても多様であるが、開空度といった森林情報をほとんど入手できなかったため、本研究では常緑樹林および落葉樹林に分けて研究事例を収集整理した。さらに、石川県白山市に常緑樹林のスギ林内プロット、および、隣接するオープンエリアを設定して、積雪・融雪の観測も行いデータ数を増やした。積雪観測には小型の温度ロガーを利用して2時間間隔で温度測定を行い、日データの標準偏差が0.3℃に収まっている場合に積雪有り、0.3℃より大きい場合は積雪なしと判定して消雪日を推定した。

収集したデータ、観測データから、林内における消雪日(SDD_f)と隣接するオープンエリアにおける消雪日(SDD_o)を読み取った。この際、消雪日が表や文中に明記されていない場合は、図から目視で読み取った。そして、林内とオープンスケースの消雪日の違い(ΔSDD = SDD_f - SDD_o)を求めた。つまり、ΔSDDがプラスであれば林内の積雪の方が長く残り、マイナスであればオープンの積雪の方が長く残ることを表す。ここで、ΔSDDは、気象条件、森林の構造(種類)、地形条件などによって決定されると考えられるが、森林や地形条件などは論文からは抽出することが難しかったため、本研究では気象条件のみを考慮することとした。気象条件としては、冬期(12~2月)降水量(mm)、冬期平均気温(℃)、冬期平均風速(m/s)とした。これらの気象データは、論文に明記されている場合にはその値を利用した。一方、論文中に気象データが明記されていない場合には、最寄りのアメダス地点の気象データを利用した。なお、気温については、逓減率を利用して観測地点の気温に補正し、降水量および風速については補正は行わなかった。

消雪日の違い(ΔSDD)、冬期平均気温、冬期降水量、冬期平均風速を見たところ、ΔSDDがプラス、マイナスの地点があり、どちらの積雪が遅くまで残るのかは一概には決まらないことが確かめられた。最も常緑樹林内の積雪が残ったのは新潟県津南町の31日(1995年)、最もオープンの積雪が残ったのは石川県白山市の-11.2日(2017年)であった。最も落葉樹林内の積雪が残ったのは岩手県雫石町の9日(1990年)、最もオープンの積雪が残ったのは新潟県村上市の-2日(2017年)であった。次いで、消雪日の違い(ΔSDD)と各気象要素との関係を調べた。冬期平均気温とΔSDDとの関係を見ると、気温が低くなるにつれて林内の積雪の方が長く残っていた。冬期平均風速とΔSDDを見ると、風速が強くなるにつれて林内の積雪の方が遅くまで残る傾向があった。一方、冬期降水量とΔSDDを見ると、冬期平均気温や風速との相関より弱いものの、負の相関が認められた。

さらに、消雪日の違いを目的変数、冬期平均気温、冬期降水量、冬期平均風速を説明変数として、決定木モデルを適用した。まず、冬期平均風速が2.0 m/sを境にして分岐しており、これよりも風速が強いエリアにおいては常緑樹林の方がオープンスペースよりも積雪が長く残ることになっていた。次に、風速が2.0 m/sより弱い場合、冬期平均気温が2.3℃よりも低ければ常緑樹林内の積雪の方が長く残り、2.3℃よりも高ければオープンスペースの積雪の方が長く残る結果となった。一方、落葉樹林の場合、冬期平均気温-2.5℃が最初の境界となっており、これより気温が低いエリアでは落葉樹林内の積雪が長く残る結果となった。さらに、冬期平均気温が0.15℃より低ければ落葉樹林内の積雪が少し長く残り、0.15℃より暖かければオープンスペースの雪が少し長く残ることが分かった。