13:45 〜 14:00
[MGI25-13] 全国植生調査データベースの活用
キーワード:植生、植物地理、地理情報システム(GIS)、データベース、植物社会学ルルベデータベース(PRDB)、シラビソ/オオシラビソ境界
1.はじめに
環境省生物多様性センターでは、全国1:25,000植生図を整備中である。その調査によって得られた、植物種と位置情報の情報がデータベースとして整備されている。アジア航測では1:25,000植生図の整備が開始された平成12年から一貫して本データベースの管理を受託しているが、利活用の事例があまり認められないのが現状である。そこで、本講演では全国植生調査データベースを紹介して、山岳地での植物の分布の解析事例を紹介して、全国植生調査データベースの利活用を促進することを目的とする。
2.植生調査データベースの紹介
本データベースは環境省生物多様性センターが実施している自然環境保全基礎調査植生調査(以下、植生調査という)で得られたデータを取りまとめたものである。植生調査は自然環境保全施策の推進等において重要な資料となる現存植生図を全国的に整備することを目的に、1973年度以降40年以上に渡り継続して実施されているものである。
全国植生調査DBは、環境省多様性センター植生調査ホームページ(http://gis.biodic.go.jp/webgis/files/veg_survey_db_h12-27.pdf)よりダウンロードできる。2017年3月公開のものは59,240件の地点情報および964,045件の植物データを含んでいる。
2-1.本データベースの構成
全国植生調査データベース(以下「全国植生調査DB」という。)は、1/2.5万植生図作成業務における植生調査データを整理したものであり、おもに「T001調査地点一覧」、「T002植物表(階層別種リスト)」のテーブルから構成されている。
1)「T001調査地点一覧」
調査地点一覧には、1地点 1 レコードとして以下の項目が記載されている。
・調査地点情報(調査地点コード*1、 2次メッシュ、 調査区分、ブロック、 都道府県、 市町村、 緯度・経度等)
・調査実施情報(調査者、調査年月日等)
・凡例(植生区分、凡例、群落名称等)
・階層区分(高木層~コケ層の優占種名、植被率、高さ等)
・立地情報(海抜、方位、傾斜、地形、土壌等)
・資料情報(既存資料引用の場合)
・現地写真ファイル(代表的な写真)
2)「T002植物表(階層別種リスト)」
植物表には、組成調査結果の出現種1種を1レコードとして調査地点コード、階層区分、被度、群度、種名が記載されている。
階層区分(高木層;1、亜高木層;2、低木層1;3、低木層 2;4、草本層 1;5、草本層2;6、コケ層;7)
2-2.組成調査と優占種調査
全国植生調査 DB の調査データは組成調査と優占種調査に大別される。
1)組成調査
組成調査は、現在広く用いられている Braun-Blanquet(1964)による植物社会学的全推定法による全種調査資料(アウフナーメ)に、環境省の植生図の凡例を記載したものである。組成調査データは「T001調査地点一覧」と調査地点別の「T002 植物表(階層別種リスト)」から構成されている。
2)優占種調査
優占種調査は、「T002 植物表(階層別種リスト)」を省いた、環境省植生図作成業務独自の補足的な調査です。優占種調査1の相観調査と、優占種調査2の植生配分(景観)調査の2種類があり、優占種調査1・2のデータは「T001調査地点一覧」に示されている。
3.利用にあたっての留意事項
全国植生調査DBに納められている植生調査データは、調査当時のエラーデータ等に適宜修正を加えてある。また、項目によっては間違ったデータが登録されている可能性があるため、今後もスクリーニング等を行い、適宜更新していく予定である。
4.利用事例
植生調査データベースのデータを利用して、中部地方から関東地方におけるオオシラビソとシラビソの分布を検討した。
図に検討結果を示した。図中の黒丸はオオシラビソ優占林、白丸はシラビソ優占林、灰色の丸は両者が同所的に生育している林分である。大まかには多雪地域にはオオシラビソ優占林が、少雪地域にはシラビソ優占林が分布しているといえる。少雪地域にオオシラビソ優占林が認められるが、地形的に雪がふきだまりやすい場所といった立地環境を反映したものと考えられる。
5.まとめ
以上のように、植生調査データベースは多数の植物種の分布情報を持っており、気象や地質。地形などの各種要素と組み合わせることで植生の成立要件についての情報を引き出せる素材であるといえる。整備地域現在全国の85%程度であるが、今後も拡大予定である。皆様には活発な利用をお願いしたい。
環境省生物多様性センターでは、全国1:25,000植生図を整備中である。その調査によって得られた、植物種と位置情報の情報がデータベースとして整備されている。アジア航測では1:25,000植生図の整備が開始された平成12年から一貫して本データベースの管理を受託しているが、利活用の事例があまり認められないのが現状である。そこで、本講演では全国植生調査データベースを紹介して、山岳地での植物の分布の解析事例を紹介して、全国植生調査データベースの利活用を促進することを目的とする。
2.植生調査データベースの紹介
本データベースは環境省生物多様性センターが実施している自然環境保全基礎調査植生調査(以下、植生調査という)で得られたデータを取りまとめたものである。植生調査は自然環境保全施策の推進等において重要な資料となる現存植生図を全国的に整備することを目的に、1973年度以降40年以上に渡り継続して実施されているものである。
全国植生調査DBは、環境省多様性センター植生調査ホームページ(http://gis.biodic.go.jp/webgis/files/veg_survey_db_h12-27.pdf)よりダウンロードできる。2017年3月公開のものは59,240件の地点情報および964,045件の植物データを含んでいる。
2-1.本データベースの構成
全国植生調査データベース(以下「全国植生調査DB」という。)は、1/2.5万植生図作成業務における植生調査データを整理したものであり、おもに「T001調査地点一覧」、「T002植物表(階層別種リスト)」のテーブルから構成されている。
1)「T001調査地点一覧」
調査地点一覧には、1地点 1 レコードとして以下の項目が記載されている。
・調査地点情報(調査地点コード*1、 2次メッシュ、 調査区分、ブロック、 都道府県、 市町村、 緯度・経度等)
・調査実施情報(調査者、調査年月日等)
・凡例(植生区分、凡例、群落名称等)
・階層区分(高木層~コケ層の優占種名、植被率、高さ等)
・立地情報(海抜、方位、傾斜、地形、土壌等)
・資料情報(既存資料引用の場合)
・現地写真ファイル(代表的な写真)
2)「T002植物表(階層別種リスト)」
植物表には、組成調査結果の出現種1種を1レコードとして調査地点コード、階層区分、被度、群度、種名が記載されている。
階層区分(高木層;1、亜高木層;2、低木層1;3、低木層 2;4、草本層 1;5、草本層2;6、コケ層;7)
2-2.組成調査と優占種調査
全国植生調査 DB の調査データは組成調査と優占種調査に大別される。
1)組成調査
組成調査は、現在広く用いられている Braun-Blanquet(1964)による植物社会学的全推定法による全種調査資料(アウフナーメ)に、環境省の植生図の凡例を記載したものである。組成調査データは「T001調査地点一覧」と調査地点別の「T002 植物表(階層別種リスト)」から構成されている。
2)優占種調査
優占種調査は、「T002 植物表(階層別種リスト)」を省いた、環境省植生図作成業務独自の補足的な調査です。優占種調査1の相観調査と、優占種調査2の植生配分(景観)調査の2種類があり、優占種調査1・2のデータは「T001調査地点一覧」に示されている。
3.利用にあたっての留意事項
全国植生調査DBに納められている植生調査データは、調査当時のエラーデータ等に適宜修正を加えてある。また、項目によっては間違ったデータが登録されている可能性があるため、今後もスクリーニング等を行い、適宜更新していく予定である。
4.利用事例
植生調査データベースのデータを利用して、中部地方から関東地方におけるオオシラビソとシラビソの分布を検討した。
図に検討結果を示した。図中の黒丸はオオシラビソ優占林、白丸はシラビソ優占林、灰色の丸は両者が同所的に生育している林分である。大まかには多雪地域にはオオシラビソ優占林が、少雪地域にはシラビソ優占林が分布しているといえる。少雪地域にオオシラビソ優占林が認められるが、地形的に雪がふきだまりやすい場所といった立地環境を反映したものと考えられる。
5.まとめ
以上のように、植生調査データベースは多数の植物種の分布情報を持っており、気象や地質。地形などの各種要素と組み合わせることで植生の成立要件についての情報を引き出せる素材であるといえる。整備地域現在全国の85%程度であるが、今後も拡大予定である。皆様には活発な利用をお願いしたい。