14:15 〜 14:30
[MGI25-15] 大雪山系における空間情報を用いた植生変化の定量化と変化部分の要因の解明
高山植物の分布は、積雪環境の影響を強く受ける。特に、多雪な日本の山岳地域における高山植物群落は、積雪環境の違いから、主に風衝地草原群落(冬季の積雪;0-30cm)、ハイマツ低木群落(30-300cm)、雪潤草原・雪田植物群落(300cm以上)に大別される。高山植物の中で、ハイマツやチシマザサはバイオマス量が多い優占種であるが、ハイマツは冬季の積雪深に対応して群落が形成されているだけでなく、伸長成長が生育期の気象条件(温度や日照)に応答し、チシマザサは雪潤草原の中でも比較的融雪が早い場所に生育する。そのため、気候変動による気温の上昇や融雪時期の早期化はこれら高山植生の分布を変化させると考えられる。また、高山帯では地点ごとの気象条件の違い(気温、風向き、積雪条件)や微地形(斜面方位、斜度)など特定の環境要因を反映し、さまざまな植生がモザイク状に生育しているため、気候変動の影響による分布変化も、標高や生育地点ごとに異なる変化があることが想定される。
北海道大雪山国立公園において、気温上昇と雪解けの早期化によって、異なるそれぞれの生育環境でハイマツ(雪融けの早い風衝地より25ha、雪融けの遅い雪潤草原より50ha)とチシマザサ(雪潤草原50ha、森林帯‐高山帯にかけた550ha)の分布が拡大していることが、過去と現在の航空写真の定量化により、特有の生育環境における分布変化が明らかになっている。一方で、気候変動を評価するには、より広域スケールにおける山域全体での分布変化の傾向と特に拡大が生じやすい一般的な脆弱場所の抽出も必要であると考えられる。
そこで、本研究では1977年の航空写真と2017の高解像度衛星画像(WorldView-2)を用いて、大雪山系の北部から中部にかけた15km×25km(緯度43.473-43.722, 経度142.752-142.978)の高山帯全てを対象とし、ハイマツとチシマザサの40年間の分布変化の定量化、ならびに分布変化量に差異をもたらす要因を標高や斜面方位から評価した。北部-中部の大雪山系の森林限界標高は1400-1700mと場所により様々であるが、本研究では一律1400m以上で解析を行った。
解析の結果、ハイマツとチシマザサの拡大はほぼ全域で確認された。標高傾度における拡大の違いはハイマツの方が顕著で、新規定着の個体も多い。これは生育時期の低温や雪融け時期により分布を制限されていた高標高域の場所においても気象条件の変化によって分布を拡大しているためと考えられる。一方、斜面方位における拡大の差異は場所ごとに異なる傾向を示した。このことから、ハイマツとチシマザサの分布拡大は地形要因においては生育場所ごとに多様である一方、標高傾度においては明確な分布の差異が認められた。また大雪山全域で分布を拡大していることが明らかとなり、高山生態系において直接的な植生変化だけではなく、被圧やバイオマスの増加など間接的にも重大なインパクトを与えていることが示唆された。
北海道大雪山国立公園において、気温上昇と雪解けの早期化によって、異なるそれぞれの生育環境でハイマツ(雪融けの早い風衝地より25ha、雪融けの遅い雪潤草原より50ha)とチシマザサ(雪潤草原50ha、森林帯‐高山帯にかけた550ha)の分布が拡大していることが、過去と現在の航空写真の定量化により、特有の生育環境における分布変化が明らかになっている。一方で、気候変動を評価するには、より広域スケールにおける山域全体での分布変化の傾向と特に拡大が生じやすい一般的な脆弱場所の抽出も必要であると考えられる。
そこで、本研究では1977年の航空写真と2017の高解像度衛星画像(WorldView-2)を用いて、大雪山系の北部から中部にかけた15km×25km(緯度43.473-43.722, 経度142.752-142.978)の高山帯全てを対象とし、ハイマツとチシマザサの40年間の分布変化の定量化、ならびに分布変化量に差異をもたらす要因を標高や斜面方位から評価した。北部-中部の大雪山系の森林限界標高は1400-1700mと場所により様々であるが、本研究では一律1400m以上で解析を行った。
解析の結果、ハイマツとチシマザサの拡大はほぼ全域で確認された。標高傾度における拡大の違いはハイマツの方が顕著で、新規定着の個体も多い。これは生育時期の低温や雪融け時期により分布を制限されていた高標高域の場所においても気象条件の変化によって分布を拡大しているためと考えられる。一方、斜面方位における拡大の差異は場所ごとに異なる傾向を示した。このことから、ハイマツとチシマザサの分布拡大は地形要因においては生育場所ごとに多様である一方、標高傾度においては明確な分布の差異が認められた。また大雪山全域で分布を拡大していることが明らかとなり、高山生態系において直接的な植生変化だけではなく、被圧やバイオマスの増加など間接的にも重大なインパクトを与えていることが示唆された。