日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI25] 山岳地域の自然環境変動

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科、共同)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)

[MGI25-P14] 乗鞍高原における積雪融解モデルを用いた積雪融解プロセスの検討

*西村 基志1佐々木 明彦2鈴木 啓助2 (1.信州大学大学院総合工学系研究科、2.信州大学理学部)

キーワード:融雪、熱収支、消耗モデル、山岳地域

冬季降水によって形成される積雪は,山岳地域の大気環境や生態系などの自然環境を形成する上で非常に重要な一因子である.積雪の融解過程を再現する際に多く用いられるのが気温や日射量などをパラメータとする融解・消耗モデルである.このモデル式を用いることで積雪や氷河の消耗量を計算することが可能となり,それらのモデリング結果は空間的な融解量分布解析へも応用可能であるため,その汎用性や応用の面での利点から広く用いられている.本研究は気象観測を行っている乗鞍高原の標高1590 m地点において上記の積雪融解モデルを適用し,積雪融解プロセスのモデリングを行った.観測地点での気象観測項目は気温 (℃),湿度 (%),風向 (degree),風速 (m s−1),気圧 (hPa),放射4要素 (W m−2),積雪深 (m) である。観測データは10分ごとに計測・記録されている.本研究ではそれらの観測データを用いて熱収支法による雪面熱収支解析と,気温のみをパラメータとしたモデルと気温と日射量をパラメータとしたモデルを用いたモデル解析を行った.これらのモデルは熱収支解析の結果から定義した消耗期に適用し,モデルの係数は2011/12年から2016/17年の消耗期における熱収支法による融解量の解析結果を用いて回帰分析を行うことによって決定した.また,モデル計算値が負となった場合は融解が起こっていないとし,解析データ欠測とした.熱収支解析の結果から,涵養期に比べ消耗期に短波放射収支による熱量が大きく増加しており,対象地点での積雪融解を支配しているのは短波放射収支であることが明らかになった.モデル解析の結果,気温のみをパラメータに用いたモデルよりも気温と日射量をパラメータとしたモデルの標準誤差が小さくなり,良い精度を示した.気象観測の結果,本研究地点では気温,風速,水蒸気圧の値が小さかった.これによって乱流フラックスが少なくなり,短波放射収支による熱量が多くの融解熱を供給したため,同地点の積雪融解は短波放射収支に支配されたと考察できる.日射量を含むモデルの方がよい精度を示したが,これは同地点の積雪融解を支配しているのは短波放射収支であるという熱収支解析の結果を考慮すると妥当である.