日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI25] 山岳地域の自然環境変動

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科、共同)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)

[MGI25-P15] 乗鞍岳東斜面の源流集水域における渓流水質の時間・空間変動特性

*清水 啓紀1佐々木 明彦2鈴木 啓助2 (1.信州大学大学院総合理工学研究科、2.信州大学理学部)

キーワード:越年性雪渓、地下水、間欠河川

乗鞍岳東斜面の源流集水域は,越年性雪渓を有する周氷河性斜面の自然裸地とハイマツ林からなる高山低木群落が発達し,複数のガリーが形成されている。対象集水域内には,季節により降雨後の数日のみ流水を有する河道と恒常的に流水を有する河道が共存している。これらのガリーでは降雨や融雪水の流出過程が異なると推定されるが,下流の生態系の形成に重要な役割を果たす地表流の水質調査は実施されていない。本研究では,対象集水域内のガリーの上流および下流と自然裸地の数地点で地表流の採取を定期的に実施し,降雨採取を並行することで,渓流水質の季節変動と空間的差異に関する検討をおこなった。
流水が絶えない河道はHCO3濃度やCa2濃度が降雨後の数日のみ生じる流水と比べ高く,地下水深度が浅く表面流出しやすいために恒常的に流水を有すると考えられる。またこの流水はSO42濃度も高く,現地調査から熱水変質作用により形成された硫化鉄の酸化による影響を受けていることが示唆された。一方でHCO3濃度とSO42濃度に関して,自然裸地における標高がほぼ等しくそれぞれが異なる湧水地点の下流にあたる2地点で採水した試料の水質は,地点間に明瞭な差異が生じていた。従って対象集水域内の自然裸地の下を流れる中間流出水の水質は,降雨および融雪水の流出過程により,無視できないほどの空間的差異を生じていることが明らかとなった。