[MGI25-P18] 西穂高岳における積雪期の熱収支解析
キーワード:熱収支、山岳地域、気象観測
山岳地域における積雪の融解は,周辺地域の植生に影響を与えるほか,水資源の供給という観点からも重要である.そのため,山岳地域での積雪の融解機構を明らかにすることは重要である.山岳地域での研究は,その気象要素や地理条件が地点ごとに大きく異なり,様々な地点における観測が必要である.山岳地域は気象要素や地理条件が大きく異なり,従って,様々な地点での観測が必要である.本研究では,西穂高岳において気象観測および熱収支解析を行い,山岳地域の積雪の融解機構の地域的特徴を明らかにすることを目的とした.解析は西穂高岳の標高2355 m地点において行い,解析対象期間は2013年から2017年の各積雪期間とした.観測項目は,気温(℃),相対湿度(%),風向(degree),風速(m s−1),大気圧(hPa),下向き・上向き短波放射(W m−2),下向き・上向き長波放射(W m−2),積雪深(m),降水量(mm)である.これらの観測データは10分間隔で測定・記録された.ただし,積雪深のみは1時間間隔で測定・記録された.雪面温度は,ステファン・ボルツマンの法則を用いて,観測した上向き長波放射量から求めた.気象観測の結果,日平均気温は11月~3月までほとんど0 ℃を下回っており,低い値を示した.また,日平均水蒸気圧は11月~3月まで1~6 hPaであり,4月以降に気温の上昇と共に増加していた.日平均風速は1~10 m s−1であり,期間を通して明瞭な季節内変動を示さなかった.これらのことから,本研究地点の気象特性として,積雪期の気温と水蒸気圧が小さいことが明らかとなった.各期間の熱収支解析の結果から,積雪期には正味放射量が総融解熱量の80~95 %を占め,最大の熱量であることが分かった.これは,本研究地点の気温と水蒸気圧が低く,乱流輸送量が小さく抑えられたためであると考えられる.また,涵養期には顕熱・潜熱輸送が負であり,消耗期には正であることが分かった.これは,涵養期に気温が非常に低く,雪面温度よりも気温のほうが低い日が多かったためであると考えられる.消耗期には気温と水蒸気圧が上昇し,顕熱・潜熱輸送量が増加したため,正味放射の割合は70~76 %となった.降雨日は非降雨日に比べて顕熱・潜熱輸送量の割合が増加していた.降雨時は非降雨時に比べて気温と水蒸気圧が高く,その結果,顕熱・潜熱輸送量が増加したと考えられる.