[MGI27-P04] ディープラーニングに基づく南海トラフ浅部低周波地震検出の試み
キーワード:DONET、機械学習、低周波地震
はじめに:近年の地震・地殻活動観測監視網の発達により、通常の地震とは性質の異なる低周波地震(low-frequency events; LFE)の存在が明らかとなった。LFEは通常の地震と比べて短周期成分の放射が弱い一方、長周期成分に大きなエネルギーを持つという特徴がある。また、微動状の波形を示し数分程度以上の長い継続時間を持つ。低周波地震の発生はプレート境界等における断層すべりの多様性を示しており、従って発生メカニズムの研究からとすべり面の摩擦特性についての理解が深まると期待される。このような背景から、低周波地震の検出手法の開発とモニタ、発生メカニズムに関する研究が進められている。
我々はこれまでに、紀伊半島沖の熊野灘から南海トラフに展開された海底地震・津波観測網(DONET)によって観測された、浅部LFEについて研究を行ってきた。LFEは微動状の波形を示すために、通常の地震を前提としたシステムではトリガされず、目視によって検知を行ってきた。LFEの活動をモニタするためには、自動的に検知を行い、かつ通常の地震と区別する必要がある。
本発表では、深層機械学習を用いた人工知能(AI)による、LFE自動検出の試みについて紹介する。前述のように、LFEは通常の地震と比べて周波数成分や継続時間に特徴がある。地震動波形は一次元時系列データの集合であるが、ランニングスペクトルを用いる事により周波数特性の違いとシグナルの継続時間を同時に表現可能である。従って、ランニングスペクトルの画像認識から、LFEを検出し、かつ通常の地震と判別する手法の開発を試みる。
手法:ここでは画像認識のために深層畳み込みニューラルネット(CNN)を使用し、教師データを用いた学習を行う。これを用いて連続スペクトル画像から、LFEの検出を行う。
DONETデータは品質管理のために、定期的にランニングスペクトルを作成している。LFEについて、小さいイベントでは長周期成分は背景ノイズに埋もれてシグナルが不明瞭になる。従ってここでは、2-10Hzの成分について作成したプロットを用いる。ランニングスペクトル画像を強度の対数に比例したグレースケールに変換し、シグナル探索に適したサイズに変更する。1時間ごとに作成したプロットを接続し、1日長のスペクトル画像を作成する。
深層CNNを構築するには教師データが必要である。教師データとしてLFE、通常の地震、背景ノイズのカテゴリを用意し、以下の手順で64x64ピクセルの教師データ画像を作成した。このサイズの画像は2-10Hzのスペクトルの約225秒のウインドウに対応する。
LFEについては、2015年9-10月および2016年4月にあった活発な活動について作成したカタログからイベント発生時刻をリストし、これを基に画像を切り出す。継続するシグナルが画像の中心に近くなるよう、時間方向について適宜切り出し時刻をシフトした。374のイベントについて、シグナルが明瞭に見られた観測点から16710の教師データを作成した。通常の地震については、DONET自動震源決定による震源情報を基に作成した。イベント数がLFEと同じオーダーとなるよう、2016年1月と2月に発生した771の地震から27294の教師データを作成した。また、遠地地震によるシグナルの学習のため、2015年から2016年に起きたマグニチュード7以上の全世界の地震についてP波到達時刻の画像を切り出し、通常の地震の教師データに含めた。22の地震について、924の画像を作成した。ノイズについては、2015年から2016年について、カタログに掲載されたLFE、自動震源決定で検知された地震全ての前後10分間を除外、さらにマグニチュード7以上の地震のシグナル到達時から1時間のウインドウを除いたタイムウインドウからランダムに1000のウインドウを抽出し、全観測点におけるスペクトル画像を切り出し教師データとした。データの数は169362となった。なお、システムの不具合によりスペクトル画像がルーチンで作成されなかった期間については、画像データの作成から除去してある。
このように構築した深層CNNを用いたLFEの検出について紹介する。
我々はこれまでに、紀伊半島沖の熊野灘から南海トラフに展開された海底地震・津波観測網(DONET)によって観測された、浅部LFEについて研究を行ってきた。LFEは微動状の波形を示すために、通常の地震を前提としたシステムではトリガされず、目視によって検知を行ってきた。LFEの活動をモニタするためには、自動的に検知を行い、かつ通常の地震と区別する必要がある。
本発表では、深層機械学習を用いた人工知能(AI)による、LFE自動検出の試みについて紹介する。前述のように、LFEは通常の地震と比べて周波数成分や継続時間に特徴がある。地震動波形は一次元時系列データの集合であるが、ランニングスペクトルを用いる事により周波数特性の違いとシグナルの継続時間を同時に表現可能である。従って、ランニングスペクトルの画像認識から、LFEを検出し、かつ通常の地震と判別する手法の開発を試みる。
手法:ここでは画像認識のために深層畳み込みニューラルネット(CNN)を使用し、教師データを用いた学習を行う。これを用いて連続スペクトル画像から、LFEの検出を行う。
DONETデータは品質管理のために、定期的にランニングスペクトルを作成している。LFEについて、小さいイベントでは長周期成分は背景ノイズに埋もれてシグナルが不明瞭になる。従ってここでは、2-10Hzの成分について作成したプロットを用いる。ランニングスペクトル画像を強度の対数に比例したグレースケールに変換し、シグナル探索に適したサイズに変更する。1時間ごとに作成したプロットを接続し、1日長のスペクトル画像を作成する。
深層CNNを構築するには教師データが必要である。教師データとしてLFE、通常の地震、背景ノイズのカテゴリを用意し、以下の手順で64x64ピクセルの教師データ画像を作成した。このサイズの画像は2-10Hzのスペクトルの約225秒のウインドウに対応する。
LFEについては、2015年9-10月および2016年4月にあった活発な活動について作成したカタログからイベント発生時刻をリストし、これを基に画像を切り出す。継続するシグナルが画像の中心に近くなるよう、時間方向について適宜切り出し時刻をシフトした。374のイベントについて、シグナルが明瞭に見られた観測点から16710の教師データを作成した。通常の地震については、DONET自動震源決定による震源情報を基に作成した。イベント数がLFEと同じオーダーとなるよう、2016年1月と2月に発生した771の地震から27294の教師データを作成した。また、遠地地震によるシグナルの学習のため、2015年から2016年に起きたマグニチュード7以上の全世界の地震についてP波到達時刻の画像を切り出し、通常の地震の教師データに含めた。22の地震について、924の画像を作成した。ノイズについては、2015年から2016年について、カタログに掲載されたLFE、自動震源決定で検知された地震全ての前後10分間を除外、さらにマグニチュード7以上の地震のシグナル到達時から1時間のウインドウを除いたタイムウインドウからランダムに1000のウインドウを抽出し、全観測点におけるスペクトル画像を切り出し教師データとした。データの数は169362となった。なお、システムの不具合によりスペクトル画像がルーチンで作成されなかった期間については、画像データの作成から除去してある。
このように構築した深層CNNを用いたLFEの検出について紹介する。