09:25 〜 09:40
[MGI29-02] 「オープンデータ」とJpGU:国際動向と日本のトップダウン/ボトムアップな動き
キーワード:オープンサイエンス、オープンデータ、研究データ共有
「オープンサイエンス」「オープンデータ」の議論が徐々に活発になってきた。JpGU2018年大会でも、ユニオンセッションGreat Debateのテーマ「Role of Open Data and Open Science in Geoscience」が開催されることとなり、地球惑星科学コミュニティにおける関心事の一つとなりつつある。本講演を行うセッション「Great Debateへ向けて: オープンデータ,オープンサイエンスの近年の状況」は、Great Debateのための準備的議論として位置付けられている。
JpGUへ参加している研究機関においても、データのオープン化をどうするか、検討し始めた機関も増えているようである。いわゆる「オープン化」の流れに、地球惑星科学の研究者、研究機関、学協会はどう対処していけばよいのか、心配する声もきかれる。著者は、2013年ごろから国際的なオープンサイエンスの動向を、国内においていちはやく議論しはじめ、国内での先導的な議論(*)に加わってきた(*:日本学術会議[オープンサイエンスの検討に関する委員会(オブザーバ)/国際サイエンスデータ分科会/フューチャーアースの推進に関する委員会他]、ICSU-WDS Scientific Committee ex officio、内閣府オープンサイエンス検討会委員、国会図書館科学技術譲歩整備審議会委員、Research Data Alliance国際会議など)。これらの活動を通じて国内の議論についての参画・情報収集をしてきた視点を生かして、その基本的な考え方、近年の動向、将来像、また地球惑星科学領域での関わりなどについて紹介、議論をしたい。
そもそも、オープンサイエンスやオープンデータと呼ばれる動きが、科学研究においてどういう役割をもっているのか、何の目的で、どういう必要性があって議論され推進されているのか。研究者・研究機関は何をすればよいのか。科学研究において、データは自分の研究活動の基礎であり、材料であり、しばしば研究の独自性・先端性を担っている。「オープンデータ」について、例えば以下のような議論論点があるだろう。
・「オープンデータ」は自分のすべてのデータについて、無制限な開示をしなけれなならないのではない
・国際的には「研究データ共有」(Research Data Sharing)等と呼ばれ、自治体データの公開(Open Government Data)などと区別される
・地球惑星科学においてはとくに、観測データは二度と再現しない現象の記録、人類の資産
・近年はオープンデータと言わず、「FAIRデータ原則」(Findable, Accessible, Interoperable, Reusable)など新しい枠組みも検討・推進されている
・研究の進展やその研究分野の活性化に有用なデータ共有・開示をすべき
・研究上不利益なデータ公開を強制するべきではない
これらを議論するために、下記のような活動が現在進められている。
・G8、G7、OECD(経済開発協力機構)など国際政策調査・多国間枠組み合意形成
・欧州委員会、NSF(全米科学財団)などでの公的研究資金の配分決定における方向付け
・ICSU(国際科学会議;日本からは日本学術会議が加盟)、ICSU下のCODATA(科学データ委員会)、ICSU-WDS(世界データシステム)、また、RDA(Research Data Alliance;研究データ同盟)などコンソーシアムやボトムアップコンセンサス形成のフォーラムなど
・Springer-Nature、Elsevier、Wiley、トムソンロイターなど商業学術出版社をふくむアカデミック・パブリッシャーにおける論文の根拠データの提供を求めるポリシー、またその関連企業によるデータ置き場(データ・リポジトリ)機能の提供。データ・ジャーナルに掲載するデータペーパーと言う形で、研究データの生成原理や特性、利用手段などの解説論文を出版するメディアを用意するとともに、データへ恒久的識別子として、論文と同様にDOI(Digital Object Identifier) によるインターネット上での情報リンクを恒久的に維持し発見可能とする取り組み
・AGU(American geophysical Union)、EGU(European Geosciences Union)など大規模な学協会活動における、データの公開ポリシー策定、論文出版時の根拠データの提供を求めるなどの動機づけ。Earth & Space Science Informaticsセクションの創設、各種セッションでの研究者間のデータ整備やデータサイエンス、情報学的議論の醸成と情報交換の推進
こうした現状を俯瞰して紹介、議論を行い、地球惑星科学におけるグレートディベートの一助となれば幸いである。
JpGUへ参加している研究機関においても、データのオープン化をどうするか、検討し始めた機関も増えているようである。いわゆる「オープン化」の流れに、地球惑星科学の研究者、研究機関、学協会はどう対処していけばよいのか、心配する声もきかれる。著者は、2013年ごろから国際的なオープンサイエンスの動向を、国内においていちはやく議論しはじめ、国内での先導的な議論(*)に加わってきた(*:日本学術会議[オープンサイエンスの検討に関する委員会(オブザーバ)/国際サイエンスデータ分科会/フューチャーアースの推進に関する委員会他]、ICSU-WDS Scientific Committee ex officio、内閣府オープンサイエンス検討会委員、国会図書館科学技術譲歩整備審議会委員、Research Data Alliance国際会議など)。これらの活動を通じて国内の議論についての参画・情報収集をしてきた視点を生かして、その基本的な考え方、近年の動向、将来像、また地球惑星科学領域での関わりなどについて紹介、議論をしたい。
そもそも、オープンサイエンスやオープンデータと呼ばれる動きが、科学研究においてどういう役割をもっているのか、何の目的で、どういう必要性があって議論され推進されているのか。研究者・研究機関は何をすればよいのか。科学研究において、データは自分の研究活動の基礎であり、材料であり、しばしば研究の独自性・先端性を担っている。「オープンデータ」について、例えば以下のような議論論点があるだろう。
・「オープンデータ」は自分のすべてのデータについて、無制限な開示をしなけれなならないのではない
・国際的には「研究データ共有」(Research Data Sharing)等と呼ばれ、自治体データの公開(Open Government Data)などと区別される
・地球惑星科学においてはとくに、観測データは二度と再現しない現象の記録、人類の資産
・近年はオープンデータと言わず、「FAIRデータ原則」(Findable, Accessible, Interoperable, Reusable)など新しい枠組みも検討・推進されている
・研究の進展やその研究分野の活性化に有用なデータ共有・開示をすべき
・研究上不利益なデータ公開を強制するべきではない
これらを議論するために、下記のような活動が現在進められている。
・G8、G7、OECD(経済開発協力機構)など国際政策調査・多国間枠組み合意形成
・欧州委員会、NSF(全米科学財団)などでの公的研究資金の配分決定における方向付け
・ICSU(国際科学会議;日本からは日本学術会議が加盟)、ICSU下のCODATA(科学データ委員会)、ICSU-WDS(世界データシステム)、また、RDA(Research Data Alliance;研究データ同盟)などコンソーシアムやボトムアップコンセンサス形成のフォーラムなど
・Springer-Nature、Elsevier、Wiley、トムソンロイターなど商業学術出版社をふくむアカデミック・パブリッシャーにおける論文の根拠データの提供を求めるポリシー、またその関連企業によるデータ置き場(データ・リポジトリ)機能の提供。データ・ジャーナルに掲載するデータペーパーと言う形で、研究データの生成原理や特性、利用手段などの解説論文を出版するメディアを用意するとともに、データへ恒久的識別子として、論文と同様にDOI(Digital Object Identifier) によるインターネット上での情報リンクを恒久的に維持し発見可能とする取り組み
・AGU(American geophysical Union)、EGU(European Geosciences Union)など大規模な学協会活動における、データの公開ポリシー策定、論文出版時の根拠データの提供を求めるなどの動機づけ。Earth & Space Science Informaticsセクションの創設、各種セッションでの研究者間のデータ整備やデータサイエンス、情報学的議論の醸成と情報交換の推進
こうした現状を俯瞰して紹介、議論を行い、地球惑星科学におけるグレートディベートの一助となれば幸いである。