日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS01] アジア・モンスーンの進化と変動,新生代寒冷化との関連

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

[MIS01-P05] タリム盆地南西縁部新生界陸成層における砕屑物供給源変化と後背地の構造運動

*佐久間 杏樹1多田 隆治1吉田 知紘1長谷川 精2烏田 明典1杉浦 なおみ1郑 洪波3 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.高知大学理工学部、3.雲南大学)

キーワード:タリム盆地、隆起、ESR

新生代にインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突の伴って起きたヒマラヤ・チベット高原の段階的な隆起は、アジアモンスーンの成立に影響を与えたと言われている(e.g., Tada et al., 2016)。タリム盆地はチベット高原の北西に位置し、アジアモンスーンの成立により、著しく乾燥化した場所であることが気候モデルより示唆されている(Manabe and Broccoli, 1990)。しかし、タリム盆地の乾燥化とチベットの隆起を関連付ける地質学的証拠は乏しい。その一因として、構造運動と環境変動の地質記録の対比を可能にする、信頼度が高くかつ高精度の年代推定が困難であることが挙げられる。しかし最近になってZheng et al. (2016)は、タリム盆地西縁のAertashiセクションにおいて凝灰岩の放射年代と古地磁気層序を組み合わせて、より信頼度が高い年代モデルを構築した。

そこで本研究では、Aertashiセクションにおいて、河川成堆積物の64-500μm画分における供給源の変化を石英の電子スピン共鳴(ESR: Electron Spin Resonance)信号強度を用いて調べ、後背地の構造運動の時期と侵食様式の推定を試みた。石英のESR信号強度は石英が浴びた総放射線量と比例した格子欠陥量を示しており、総放射線量は石英が形成されてからの経過時間(=母岩となる火成岩や変成岩の形成年代)を反映することから(Toyoda and Ikeya, 1992)、しばしば供給源の指標として用いられている(Toyoda and Naruse, 2002)。粒度分画を行う前に粒度分析を行ない、各試料の粒度分布を確かめた結果、64-500μmの粒度分布は主に河川により運ばれた粒子を反映し、風成塵が混入しづらい画分であることが示唆されたので、後背地推定の為にこの画分を用いた。AertashiセクションにおけるESR信号強度測定結果から、約32Ma以前は、ESR信号強度は10前後とやや低めで、約32Maにおいて約18へと急増し、約22Maにおいて約18から約10へと再び急減し、約16Maでさらに約2へと減少すると言うように、三つの時期に急激な供給源の変化が起こったことが示唆された。Blayney et al. (2016)は、同一セクションでジルコン粒子の年代頻度から供給源の3段階の変化を示した。このうちWuqia Gr.とArtux Fm.の境界付近、Artux Fm.とXiyu Fm.の境界付近で起きた二つの変化の時期は、本研究で示したESR信号強度の変化の時期とほぼ一致している。今後は本研究で明らかにした供給源変化の原因を明らかにすると共に、同一セクションにおいて乾燥化指標の分析をして両者を比較することで、隆起と乾燥化の時代関係を直接検証してゆく予定である。