日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS01] アジア・モンスーンの進化と変動,新生代寒冷化との関連

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

[MIS01-P06] 別寒辺牛湿原泥炭コアのミズゴケセルロース酸素同位体比を用いた過去2000年間の古気候復元

*櫻井 弘道1山本 正伸1関 宰2大森 貴之3佐藤 友徳1 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院、2.北海道大学低温科学研究所、3.東京大学総合研究博物館)

キーワード:泥炭、セルロース、酸素同位体比

北海道は、東アジアモンスーン影響下の北端に位置しており、夏季モンスーンが強く吹くと、北海道に太平洋からの湿った空気が運ばれる。本研究では、別寒辺牛高層湿原から採取した 約 4mの泥炭コアに含まれるミズゴケなどの植物のセルロースの酸素同位体比を分析し、夏季東アジアモンスーンの古気候復元を試みた。ミズゴケの酸素同位体比は、ツルコケモモやチシマノガリヤスといった高等植物の酸素同位体比よりも、常に低かった。ミズゴケの酸素同位体比は降水の酸素同位体比を直接的に反映しているが、高等植物の酸素同位体比は蒸散によって高くなっているのである。よって、このミズゴケと高等植物の酸素同位体比の差は、相対湿度のプロキシとなる可能性がある。ミズゴケの酸素同位体比の変動は、約1500年前に低下し、約1100年前に上昇しており、これは暗黒寒冷期と中世温暖期に該当すると考えられる。これは、夏季モンスーンによる降水量が約1500年前に少なく、約1100年前に多いということを示唆する。また、高等植物とミズゴケの酸素同位体比の差は、ミズゴケの酸素同位体比と負の相関を持つ。これは、夏の降水量が多いときに相対湿度が高くなっていたことを示唆しており、梅雨前線の活動によって夏の北海道に長雨が降る「蝦夷梅雨」という現象に似ている。蝦夷梅雨は、夏季東アジアモンスーンが強い時に起きる典型的な現象である。したがって、約1100年前の暖かく湿った気候は、夏季東アジアモンスーンの活動が強くなったことによって、夏に頻繁に蝦夷梅雨が起きていたことを反映していると考えられる。