[MIS03-P04] 十勝沖におけるb値を用いた地震活動の監視
キーワード:b値、赤池情報量基準、完全検知できる最小マグニチュード
地震の発生頻度とマグニチュードの関係はGR則(Gutenberg–Richter law):logN(M)=a-bMによって近似的に表すことができる。係数bは大地震と小地震の相対的発生率を表す。大地震に先行してb値が低下することが数多く報告されている。地震の検知能力には限界があり、マグニチュードの小さな地震は完全に検出できない。完全に検知可能な最小マグニチュードをMcと定義すると、マグニチュードがMcより大きい地震は完全に検知でき、地震の発生頻度はGR則を従う。正確なb値解析をするためには、Mcより大きいマグニチュードの頻度分布を用いて解析を行う必要がある。地震の検知能力Mcは時間によって変化するため、本稿ではMcの時間変化を調査し、その最大値を全地震カタログに対するMcとする。また、その時間変化を検出するため、地震カタログを時間順にwindowに分割し、windowごとに計算する。Mcを偏りなく計算するため、bootstrap法を用いて、windowから地震を無作為に復元抽出し、リサンプルされた地震のサブセットにおいてMAXC (maximum curvature) 法でMcを判断し、その平均値を元のwindowのMcとした。また、地震カタログを時間順にwindowに分割し、windowごとに最尤法を用いてb値を計算し、b値の時間変化を解析した。時間変化するb値の異常性を地震活動の通常期に対応するb値と比較するために赤池情報量基準(AIC)を導入し、b値変動の有意性を評価する。すなわち、地震活動通常期の地震を無作為に抽出し、リサンプルされた地震のサブセットのb値を計算し、参照b値とする。評価したいb値と参照b値のΔAICを計算し、ΔAIC≧2を満たす場合を積算し、その割合をPとする。P値が大きいほどb値が大きく変化したことになる。このようにより客観的にb値の異常性評価することを試みた。
本稿では例として1990年-2014年にわたる十勝沖における地震活動を調査した。気象庁の地震カタログを用い、b値の日変化について解析を行った。その結果、b値は2003年9月26日の十勝沖地震(M8.0)が発生する3か月前から減少し、b値の変化の有意性を評価するP値は同時に3か月前から顕著に上昇した。この結果は、M8クラスの地震に対してb値を用いる地震予測の有効性を示した。詳細は講演時に発表する。
本稿では例として1990年-2014年にわたる十勝沖における地震活動を調査した。気象庁の地震カタログを用い、b値の日変化について解析を行った。その結果、b値は2003年9月26日の十勝沖地震(M8.0)が発生する3か月前から減少し、b値の変化の有意性を評価するP値は同時に3か月前から顕著に上昇した。この結果は、M8クラスの地震に対してb値を用いる地震予測の有効性を示した。詳細は講演時に発表する。