日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS04] Thunderstorms and lightning as natural hazards in a changing climate

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:佐藤 光輝(北海道大学 大学院理学研究院)、久保田 尚之(北海道大学)、山下 幸三(足利工業大学工学部、共同)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)

[MIS04-P02] フィリピンULATプロジェクトにおける地上静電場観測網による積乱雲内部の電荷構造推定

*野口 陸人1高橋 幸弘1佐藤 光輝1久保田 尚之1 (1.北海道大学)

キーワード:雷、積乱雲、電荷構造、多点観測

発達する積乱雲における激しい気象擾乱は水平方向の対流セルのスケールが5-10 km、時間スケール30-60 minと小さいために、その活動を把握するには、現行のアメダスや気象レーダー観測網の時間・空間分解能は必ずしも十分とはいえない。対流活動は雲内の電荷の空間分布およびその移動に反映されると考えられるが、その詳細な関係については明らかになっていない。本研究では、雷放電による地上における鉛直準静電場の変化の多点観測を行い、その水平分布の情報を使って、積乱雲内で移動した電荷の立体的な空間分布およびその電荷量を推定することを試みる。
先行研究として、フィールドミルによる多地点観測(Workman et al., 1942; Jacobson and Krider, 1976)が挙げられるが、この手法では観測器の価格およびメンテナンスの点で大規模な観測網の展開は困難であると考えられる。また、容量性アンテナを用いた観測(Krehbiel et al., 1979; Baranski et al., 2012)においては、観測機器は安価であるものの観測地点間の感度のキャリブレーションが困難であり、電荷推定の精度に問題がある。これらの問題を解決するためには、安価で簡便かつ、観測地点間のキャリブレーションが可能な高精度の電荷構造推定法を確立する必要がある。
2013年に北海道大学・阪井らによって日本・八ヶ岳周辺の7km×7kmの範囲に約4km間隔で設置された、新規開発されたプレート型観測機器7台・フィールドミル1台を用いて行われた電荷の推定は、先行研究(Krehbiel et al., 1979; Baranski et al., 2012)よりも電荷の空間分布と電荷量が10-100倍高い精度で求められている。本研究では、その手法を応用、改良し、ULATプロジェクトの一部として展開予定の、フィリピン・マニラ首都圏50ヶ所に約5km間隔で設置予定のプレート型電場センサー観測網により、高精度で積乱雲内部の電荷構造推定を行うことを目標とする。

参考文献
Baranski P., Loboda M., Wiszniowski J., Morawski M., 2012, Evaluation of multiple ground flash charge structure from electric field measurements using the Local Lightning Detection Network in the region of Warsaw, Atmos. Res., 117, 99-110, doi: 10.1016/j.atmosres.2011.10.011.
Jacobson, E. A., and E. P. Krider, 1976, Electrostatic field charges produced by Florida lightning, J. Atmos. Sci., 33, 103-117.
Krehbiel, P. R., M. Brook, and R. A. McCrog, 1979, An Analysis of the charge structure of lightning discharge to the ground, J. Geophys. Res., 84, 2432-2456.
Workman, E.J., R. E. Holzer, and G. T. Pelsor, 1942, The electrical structure of thunderstorms, Aero. Tech. Note 864, pp. 1-47, Nat. Advan. Comm., Washington D. C.