日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS06] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 302 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:関 宰(北海道大学低温科学研究所)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、真壁 竜介(国立極地研究所、共同)、植村 立(琉球大学 理学部)、座長:高尾 信太郎(国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)

11:25 〜 11:40

[MIS06-09] 気候モデルMIROC4mの南大洋海面水温バイアスの改善とその気候影響

*シェリフ多田野 サム1阿部 彩子1堀田 陽香1菊池 麻紀2小玉 貴則1鈴木 健太郎1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.JAXA地球観測研究センター)

キーワード:Southern Ocean、climate model、sea surface temperature bias

南極・南大洋は巨大な淡水、熱、炭素のリザーバーであり、長期的な気候、氷床変動を考える上で極めて重要な領域である。温暖化予測や古気候研究などで用いられる気候モデルが、南極・南大洋域の気候を精度よくシミュレートすることは、将来気候予測精度の向上、古気候実験再現性の向上や気候システムの理解にとって極めて重要である。しかしながら、気候モデルMIROC4mを含む多くの気候モデルでは、南大洋の海面水温が観測データに比べて暖かすぎることが分かっている(正の水温バイアス)。このモデルバイアスは、海洋循環を通して全球の気候や南極氷床変動に多大な影響を与えることが近年の研究から少しずつ明らかになってきた。 そこで、本研究では、気候モデルMIROC4mの南大洋の正の水温バイアスの改善を行う。また、バイアスの改善が現代気候や古気候実験再現性に与える影響を評価する。

 南大洋での正の水温バイアスの要因の一つとして、南大洋域で海面に入射する短波放射の過大評価が報告されている。近年の衛星データやモデルを用いた研究から、この過剰な短波放射は気候モデルでの過冷却水不足に伴う雲アルベド効果の過小評価に起因していることが示されている。 そこで、衛星データをもとに気候モデルMIROC4mでの雲の過冷却水の表現を改善する実験を行った。実験の結果、過冷却水の表現改善によって、短波放射の過大評価が改善された。また、これと関連して南大洋での正の水温バイアスが改善された。正の水温バイアスの改善が古気候実験の再現性に与える影響を評価するため、同じ気候モデルMIROC4mを用いて最終氷期最盛期実験を行った。その結果、バイアス改善前のシミュレーション結果よりも、古環境復元から示唆されているものと整合的な海洋深層循環(大西洋子午面循環)が得られた。