日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] 地球掘削科学

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系、共同)、菅沼 悠介(国立極地研究所)

[MIS08-P06] 海底下堆積物中に残存する真核生物由来DNAの分布:古代生態系復元への応用の可能性を探る

*星野 辰彦1,2肖 楠1浦本 豪一郎3諸野 祐樹1,2Rishi Adhikari4稲垣 史生1,2,5 (1.独立行政法人海洋研究開発機構高知コア研究所、2.独立行政法人海洋研究開発機構海底資源研究開発センター、3.高知大学海洋コア総合研究センター、4.MARUM-Center for Marine Environmental Science, University of Bremen、5.独立行政法人海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター)

キーワード:IODP、堆積物、環境DNA

IODPをはじめとした科学掘削プロジェクトは、我々の地下深部生命圏への理解を深めてきた。全球の海底下堆積物中に生息する原核生物の数は全海洋中の存在数に匹敵し、地球レベルでの元素循環に大きな影響を及ぼしてきたことがわかっている。一方、海底下の過酷な環境には耐えられてないと思われるため、真核生物については原核生物と比較するとあまり研究がなされてこなかった。真核生物の一つである菌類のDNAについては海底下深部(~2 km)の堆積物に広く検出されている。さらに、それらの一部は胞子として存在していることがわかっており、古代のカビを培養することにも成功した例も報告されている。

 近年、環境DNAに広く注目が集まっている。環境DNAとは、生物の痕跡が環境中にDNAとして残ったものであり、現世に加えて過去のDNAに関しても、古代生態系の復元という観点から研究が進んでおり、表層堆積物中の環境DNAの研究から、古気候との関連が示されている。しかしながら、海底下深部の古い堆積物中にとける環境DNAの挙動や古代の生態系・環境との関わりについては、ほとんどわかっていない。
 本研究では、40の掘削サイトから得られた300を超える堆積物試料を用いて、古代環境DNAの調査を行った。まず、ホットアルカリ法、市販の抽出キットにより抽出された600のDNA試料から、18S rRNA遺伝子断片の増幅を試みた。その結果、主に海底下100 m以浅の175のDNA試料から目的のrRNA遺伝子断片を得ることに成功した。真核生物の(古代)生物多様性を明らかにするため、得られた増幅産物のiTagシーケンシングを行った。その結果、菌類のDNAがすべてのサンプルにおいて多く検出された。これらの菌類は、環境DNA として存在している可能性がある一方、胞子として生きて存在していることも考えられる。また、Ochrophyta門、Dinoflagellata門、Chlorophyta門など海底下には生存し得ない藻類のDNAも多く検出され、深度ともに減少していく傾向があった。これらの結果は、海底下深部の堆積物においても古代環境DNAが広く残存していることを示している。本発表ではさらに考察を進め、古代環境DNAと堆積物学的また古環境学的との関連と、古代生態系復元への応用の可能性について議論したい。