日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構研究開発部門第一研究ユニット)、長尾 年恭(東海大学海洋研究所)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、座長:児玉 哲哉長尾 年恭

16:45 〜 17:00

[MIS09-06] 人工知能を用いた地震を伴った電波伝搬異常の検出

*塩野 優人1本島 邦行1 (1.群馬大学大学院理工学府)

キーワード:地震、電波伝搬異常、人工知能

電磁気学的現象と地震の関連性についての研究は、日本のような地震が頻発する国にとって重要な事柄である。両者の関連性を用いた短期的地震予測についての観測結果も報告されている。電磁気学的現象と地震の関連性を観測した一例としては、VHF帯における電波観測が挙げられる。VHF帯を用いた観測では見通し外VHF帯の電波伝搬を捉えることで地震と関連付けている。筆者らは見通し内VHF波を観測しており、統計的な処理に基づいて電波伝搬異常と地震の関連性についての検証を行っている。本発表では、見通し内VHF帯電波伝搬異常と電波伝搬路周辺で発生した地震の関連性を探る手法として人工知能による深層学習を用いて電波伝搬異常を検出し、地震との関連性についての追求を行った。これまで筆者らは観測したVHF波データが正規分布に従っていることから正規分布における3σ区間を用いた電波伝搬の異常検出(以下で3σ法と呼ぶ)を行い、伝搬異常と地震の関連性の評価を行ってきた。3σ法とは、観測データに移動平均と規格化を施した後、正規分布における3σ区間を超える受信波強度のレベル変動が一定時間以上継続した場合、これを電波伝搬異常と定義し、検出を行うという方法である。この3σ法による異常検出を行った結果、VHF帯における電波伝搬異常が地震発生の数日前に発生しやすいという結果が得られた。しかし、3σ法による電波伝搬異常検出では、地震と関連性があると考えられる電波伝搬異常の件数は少なく、地震の伴わない電波伝搬異常も多く観測されている。そこで、3σ法によって検出された電波伝搬異常と地震発生のタイミングを人工知能に学習させることによって、人工知能による地震予測の可能性を追求した。深層学習のアルゴリズムとしては学習データとして用いたVHF波が時系列的な連続データであることから連続的なデータの学習に適している再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を採用した。また、今回行った深層学習では、入力データ全てに“0”と“1”のどちらかのラベルを付けることによってデータの性質ごとに2つのグループに分類する分類型RNNという方法で学習を行った。3σ法によって検出された電波伝搬異常の内、その数日以内に地震が併発した電波伝搬異常の期間内の観測データに分類学習の教師データとして“1”のラベルを付け、それ以外の期間の観測データには電波伝搬異常があっても全て“0”のラベルを付けた。これらを深層学習における入力データとして伝搬異常を生じていたデータを学習データ、そして地震を伴ったものを“1”、そうでないものを“0”としたラベルを教師データとした学習用データセットを作成した。観測データを全て用いて学習を行った場合、ラベル“0”を付けたデータのデータ数に比べ、ラベル“1”を付けたデータのデータ数が少なかった。分類型の深層学習では、2種類のラベルのデータ数を出来る限り、均等にする必要がある。このことから、地震と併発した電波伝搬異常が発生した期間を含む一定期間のデータを抜き出すことで、各ラベルのデータ数を均等になるように入力データの調整を行った。また、入力データの調整時の抜き出した一定期間の連続データ1つ1つをミニバッチとして、入力データと分割して入力するミニバッチ学習を行った。この深層学習により得られた学習結果を用いて、電波伝搬異常の検出を行ったところ、単純に3σ法による検出結果とは明らかに異なる地震を伴った電波伝搬異常の検出結果を得ることが出来た。さらに、検出した電波伝搬異常と地震の発生時刻の関連性を解析したところ3σ法と同等レベルの地震との関連性がみられる結果が得られた。本発表では、人工知能の深層学習による電波伝搬の異常判定を行い、その検出結果と地震の発生時刻の関連性の解析を行った。その結果、3σ法と同等レベルの地震との関連性がみられる結果を得ることが出来た。人工知能による深層学習のパラメータや学習用データセット作成時の条件の最適化をより精密に行うことで従来法より高い精度で地震と関連のある電波伝搬異常の検出を行えるようにしていくことが今後の課題として挙げられる。