[MIS09-P04] 火成岩の圧力誘起電流の温度依存性 -巨大地震先行的電離圏擾乱の機構解明に向けて-
キーワード:電離層総電子数、応力誘起電荷、地震
巨大地震に関連する電磁気現象として電離圏異常が2011年東北地方太平洋沖地震以降指摘されている。この現象の機構として、地中岩石の応力誘起電荷による電離圏の電場の形成が考えられる。このシナリオとして、(1)地震発生直前に震源核が形成され、断層が壊れ始める。(2)岩石に強い応力がかかり過酸化架橋構造が活性化し、その時生じた正孔が周辺へと拡散していく。(3)その電荷による電場が、震源上電離圏に誘導電場を作る。(4)この誘導電場と地球磁場の作用によって電離圏電子が移動し、震源上空電離圏に正の電子密度異常が生じると考えている。過酸化架橋構造の活性化によって電離圏異常を説明できるか考察するために、本研究では、斑レイ岩を一軸圧縮したときに流れる電流の温度依存性を調べた。試料の斑レイ岩3×6×10cmに5MPaを加え、各温度での電流の大きさを調べた結果、293Kでは数pAであった圧力誘起電流が393Kでは50pAと10倍程度増えることが分かった。また、指数関数上に乗っていることから、半導体のような熱活性化が考えられる。得られた関係式より、震源付近の温度573Kでは180nA流れると考えられる。実際に電離圏に電場を作るためには必要な電位は1.5V/m(Kelley, 2016)とされ、過酸化架橋構造の活性化によって電離圏に電場を作る可能性を議論する。