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[MIS10-08] 間氷期MIS 19における百年―千年スケールの東アジアモンスーン変動
キーワード:中国レス、冬季モンスーン強化、地磁気逆転、銀河宇宙線、MIS 19
間氷期の千年・百年スケールの気候変化は銀河宇宙線を介して太陽活動や地磁気変動の影響を受けている可能性がある。しかし、まだ高解像度気候データが不十分なためそのメカニズムは分かっていない。最後の地磁気逆転が起きた間氷期を対象に、中国黄土高原のLingtaiとXifengのレス・古土壌層から気候を復元した。夏季モンスーン(SM)指標となる帯磁率および帯磁率の周波数依存性と、冬季モンスーン(WM)の指標となる粒度の長周期変動は、歳差周期の海面変化とよく調和している。高海面期にはSMは強化(夏季降水量が増加)してWMは弱化し、一方、低海面期にはその逆の変化を示す。この海面変化と同期したSMとWMの逆向きの変動は、地磁気逆転後の、期間500~2300年の6回の短期イベントでも見られた。これらのイベントは、北西太平洋、北大西洋、大阪湾で観測された短期の高海面/温暖イベントによく対比できる。さらに地磁気逆転付近にSM(海水準)変動とは無相関のWM強化がLingtaiでは783~778 ka、Xifengでは782~777 kaに見つかった。同WM強化の期間は大阪湾で見つかっている寒冷化イベントとほぼ一致し、地球の双極子磁場強度が1/4以下にまで低下(銀河宇宙線量が50%以上増加)した期間と重なる。よって、銀河宇宙線を介して増加した雲の日傘効果により、冬季に比熱が小さい大陸の気温が太平洋よりも顕著に低下して、気圧勾配が強まり冬季モンスーンが強化したと考えられる。このWM強化イベントは地磁気と気候のリンクを示す初めての風の証拠となる。