日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 古気候・古海洋変動

2018年5月23日(水) 10:45 〜 12:15 A08 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室、共同)、佐野 雅規(早稲田大学人間科学学術院)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、座長:長谷川 精

11:15 〜 11:30

[MIS10-09] 堆積相解析によるグレートバリアリーフの形成年代特定

*三輪 亘1オブラクタ スティーブン1白井 厚太郎2横山 祐典2宮入 陽介2ウェブスター ジョーディー3ハイン アルバート4 (1.秋田大学大学院国際資源学研究科、2.東京大学海洋研究所、3.シドニー大学、4.南フロリダ大学)

キーワード:珪質の砕屑性堆積物−炭酸塩堆積物の混合システム、グレートバリアリーフ

MIS11はMBDI (Mid-Brunhes-Dissolution-Event) と呼ばれる深海底での炭酸塩溶解度の上昇と、それに伴う相対的な浅海域での炭酸塩溶解度の低下が起きるイベント期間内であり、汎世界的にバリアリーフが形成された年代であるとも提言されている。しかしながら、掘削などの技術的問題や沖合に小さくまとまって存在する離礁 (Patch Reef) の存在が、MIS11がバリアリーフの形成が開始された年代であるとの推定に疑問を与えている。そのため、これら疑問を解決するためにも異なる手法によるグレートバリアリーフの形成年代特定が求められる。

 グレートバリアリーフが存在する北東オーストラリア縁辺部の堆積システムは陸成の珪質の砕屑性堆積物と海成の炭酸塩堆積物からなる混合システムであり、降水量及び河川流量の季節的な強まりの影響を大きく受けている。そこで、本研究では本大陸縁辺部の特有な堆積環境を利用して、グレートバリアリーフの形成年代の間接的な評価を行った。

珪質の砕屑性堆積物−炭酸塩堆積物の混合システムでは、堆積モデルの検討が古くからなされている。従来型の堆積モデルでは、縁取り型陸棚に当てはまらず、バリアリーフも存在しない大陸棚では、低海水準時において、大陸斜面上に河川から流入してきた珪砕屑性が大量に堆積すると指摘されている。その一方で、縁取り型陸棚に当てはまり、バリアリーフが存在している大陸棚では、低海水準時では、珪質の砕屑性堆積物はバリアリーフによってせき止められてしまい、リーフの背後すなわち大陸棚に堆積してしまう。そして、氷期から間氷期に移行する海進期において、大陸棚に堰き止められていた珪砕屑性が大陸斜面上に再堆積を起こすと指摘されている。

 本研究では、外側陸棚のグレートバリアリーフより沖合の大陸斜面に位置するマリオン海台 (Marion Plateau) の堆積物から構成されているODP Hole 1198 Aを用いて、浮遊性有孔虫化石の酸素同位体比分析及び珪砕屑性の質量堆積速度の測定を行った。得られた酸素同位体比及び質量堆積速度の結果は、MIS20からMIS19に移行する海進期以降では、各海進期に珪砕屑性の質量堆積速度が著しく増加するという結果を示した。これは、MIS19以前のMIS21の期間内で、散発的に存在していた離礁が、事実上合体し、バリアリーフ化を開始していることを示唆している。

 また、MIS21以前の珪砕屑性の質量堆積速度は、汎世界的海水準変動 (北緯65度における日射量変化、4万1千年周期) 及び地域的なモンスーン気候の変動 (南緯約20度における日射量変化、2万1千年周期) の双方に対応を見せている。

 これらの結果は、グレートバリアリーフはMIS11以前にすでに形成されており、同年代で観察された深海における炭酸塩の保存状態の悪化の影響はバリアリーフの形成に関係していないことを示唆している。さらに、北緯65度における日射量変化と地域的な日射量変化が逆位相になっている関係から、バリアリーフが形成され縁取り陸棚が誕生する以前の本地域の大陸縁辺部では、従来型の堆積モデルは適用できないとも示唆される。つまり、バリアリーフ形成以前では珪砕屑性が大陸斜面上に大量に堆積するタイミングは必ずしも低海水準時になるとは限らないということである。よって、バリアリーフ形成以前以後に関わらず、本地域の堆積モデルは従来型の堆積モデルに当てはめることができないと推測される。