日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 古気候・古海洋変動

2018年5月24日(木) 10:45 〜 12:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室、共同)、佐野 雅規(早稲田大学人間科学学術院)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、座長:磯辺 篤彦(九州大学 応用力学研究所)

11:15 〜 11:30

[MIS10-20] 別府湾海底堆積物の魚鱗記録にみられる過去2800年間のイワシ類の長期動態

*加 三千宣1山本 正伸2別府湾 海底コア研究グループ (1.愛媛大学沿岸環境科学研究センター、2.北海道大学大学院地球環境科学研究院)

キーワード:別府湾海底堆積物、堆積魚鱗、イワシ類、魚種交替、気候と海洋生態系間の大洋規模のリンケージ

イワシ類のような多穫性浮魚類の古海洋記録は、長期的な魚類資源変動の動態の特徴を明らかにし、気候変動に対してどのように資源が応答するかを理解することに役立つはずである。本研究では、日本南岸の産卵場の個体数変動のシグナルを記録していると考えられる別府湾のマイワシとカタクチイワシの年間魚鱗堆積量(SDR)の高解像度記録を復元し、これらの種の数十年から百年スケールの個体数変動の特徴を明らかにした。

マイワシの過去2850年間のSDRのウェーブレット解析から、~50年周期や、 ~100年周期、~300 年周期が認められ、カタクチイワシでは、30年周期、260年周期が認められた。20世紀で認められてきたマイワシとカタクチイワシの25-30年間隔の魚種交替は、2850年間で認められる時期はわずか10%程度であった。このことは、北西太平洋のマイワシ・カタクチイワシ間の生態系レジームシフトは、20世紀以前では不明瞭であることを示している。マイワシには、数十年~100年スケール変動の振幅が長期的に減少するトレンドが認められ、これは、北西太平洋の冬の古水温記録の上昇トレンドに起因する可能性がある。北米年輪から得られたPDOインデックスや中国中南部の積雪異常インデックスには、マイワシSDRと似た~300年スケールの変動が過去550年間に認められることや、積雪異常インデックスとマイワシが、過去1000年間に同位相関係が顕著に認められることから、数百年スケール変動を示す気候と海洋生態系の間に、大洋規模あるいはリージョナルなリンケージがあることがわかった。