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[MIS10-25] 最終氷期最盛期以降の親潮流入による日本海混合過程の力学モデル
キーワード:日本海、親潮流入、鉛直混合、最終氷期最盛期
LGMでの海水位低下で周囲と孤立した日本海では、表層への淡水負荷に伴って強固な低塩分層が形成されたが、津軽海峡から高密度の親潮系水が流入し始めた17kyrBP以降は、急速に進行した鉛直混合によって、この塩分成層は解消された。少なくとも親潮流入以降の早い時期には、水深20 m程度の広大なsillであった対馬海峡から親潮系水が南下・流出したとは考えにくい。津軽海峡での正味の流量が0であるような、エスチャリー型の親潮流入を提案したIkeda et al. (1999)は合理的である。ただ、一般的に、高密度水塊の流入は直ちに鉛直混合を起こすわけではなく、まず同程度の密度層に水平貫入するはずである。親潮系水の流入から日本海への鉛直混合に至るプロセスの理解には、まだギャップがあるように思われる。本研究では、日本海を水平方向に一様な箱に単純化して、鉛直移流・拡散で構成される水温・塩分の輸送過程と、淡水や海峡からの流出入、さらに海面冷却に伴う対流を与え、LGMから10kyrBP程度までの、密度成層構造の時間変化をもたらす力学過程を考察した。日本海への重い親潮の流入によって、日本海に存在していた500m深程度までの「浅い対流」は、海底にまで達する「深い対流」に変質し、これによって日本海底層の貧酸素水塊は解消した。深い対流に押し上げられて中層へと貫入層を上げた親潮系水は、日本海上中層に高塩分を供給し、これによって日本海の塩分成層は解消した。親潮系水による日本海上中層の高塩化によって、海底に達する「深い対流」は維持された。