日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 古気候・古海洋変動

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室、共同)、佐野 雅規(早稲田大学人間科学学術院)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)、座長:加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)

15:30 〜 15:45

[MIS10-29] CO2濃度に支配される最終氷期の北半球高緯度植生変遷

*関 宰1原田 尚美2五十嵐 八枝子3 (1.北海道大学低温科学研究所、2.海洋研究開発機構、3.北方圏古環境研究所)

キーワード:気候システム、炭素循環、負のフィードバック、北方林植生、最終氷期

地球の気候システムにおける大気中CO2濃度の制御メカニズムの解明は気候システム全体を理解する上で鍵を握る。これまでの研究から炭素循環と気候変動は密接に結びついていることが示されているが、興味深い特徴として、寒冷期のCO2濃度低下に下限(190ppm前後)が存在するように見えることが挙げられる。この特徴は後期更新世の氷期−間氷期サイクルにおいて明瞭に示されており、千年以下の時間スケールにおける炭素循環に直接かつ敏感に応答する負のフィードバックの存在が示唆されている。その候補として、陸上植生のフィードバック(CO2変動に応答したバイオマスの増減)が提案されているが、いまだに実証されていない。その理由の一つに堆積物の古植生記録とアイスコアCO2との直接対比が困難なことが挙げられる。本研究ではアイスコアのCO2と共通の年代軸を有するオホーツク海洋堆積物コア(XP07-C9)中の植生バイオマーカー(n-alkaneのC29/C31比)と花粉組成を高解像度で分析し、アイスコアCO2記録と直接対比をおこない、過去8.5万年間のCO2と極東ロシアの植生(木本vs草本)の関連を検証した。驚くべきことに、復元された植生の変遷(木本vs草本)は最終氷期において北半球の千年スケールの気候変動を支配しているとされるダンスガード・オシュガー・サイクルよりも、むしろCO2濃度の変動に極めて同調しているという結果が得られた。このことから、最終氷期における北半球の陸上植生のバイオマス変動はCO2変動に敏感に応答し、CO2濃度の下限を規定する負のフィードバックとして機能することで、極端な寒冷化にブレーキをかける重要なプレイヤーであることが示唆される。