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[MIS10-29] CO2濃度に支配される最終氷期の北半球高緯度植生変遷
キーワード:気候システム、炭素循環、負のフィードバック、北方林植生、最終氷期
地球の気候システムにおける大気中CO2濃度の制御メカニズムの解明は気候システム全体を理解する上で鍵を握る。これまでの研究から炭素循環と気候変動は密接に結びついていることが示されているが、興味深い特徴として、寒冷期のCO2濃度低下に下限(190ppm前後)が存在するように見えることが挙げられる。この特徴は後期更新世の氷期−間氷期サイクルにおいて明瞭に示されており、千年以下の時間スケールにおける炭素循環に直接かつ敏感に応答する負のフィードバックの存在が示唆されている。その候補として、陸上植生のフィードバック(CO2変動に応答したバイオマスの増減)が提案されているが、いまだに実証されていない。その理由の一つに堆積物の古植生記録とアイスコアCO2との直接対比が困難なことが挙げられる。本研究ではアイスコアのCO2と共通の年代軸を有するオホーツク海洋堆積物コア(XP07-C9)中の植生バイオマーカー(n-alkaneのC29/C31比)と花粉組成を高解像度で分析し、アイスコアCO2記録と直接対比をおこない、過去8.5万年間のCO2と極東ロシアの植生(木本vs草本)の関連を検証した。驚くべきことに、復元された植生の変遷(木本vs草本)は最終氷期において北半球の千年スケールの気候変動を支配しているとされるダンスガード・オシュガー・サイクルよりも、むしろCO2濃度の変動に極めて同調しているという結果が得られた。このことから、最終氷期における北半球の陸上植生のバイオマス変動はCO2変動に敏感に応答し、CO2濃度の下限を規定する負のフィードバックとして機能することで、極端な寒冷化にブレーキをかける重要なプレイヤーであることが示唆される。