日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 古気候・古海洋変動

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室、共同)、佐野 雅規(早稲田大学人間科学学術院)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)

[MIS10-P05] 房総半島南端千倉層群布良層の浮遊性有孔虫化石を用いた古海洋環境復元

*長谷川 大輔1山本 秀忠1岡田 誠2林 広樹3 (1.茨城大学大学院理工学研究科、2.茨城大学、3.島根大学)

キーワード:北半球氷河作用、浮遊性有孔虫、房総半島

後期鮮新世の3Ma付近から前期更新世にかけて,北半球で大陸氷床の拡大が起こった.これは北半球氷河化作用(NHG:Northern Hemisphere Glaciation)と呼ばれている.また,この時期に卓越する氷期-間氷期のサイクルが2.3万年から4.1万年へと変化する.したがって,この時代の古海洋を復元することは,NHGや当時の氷期‐間氷期サイクルがどのように地球の気候システムを支配していたかを理解するうえで重要である.

本研究対象は房総半島南端に分布する上部鮮新統から下部更新統の千倉層群布良層である.布良層では岡田ほか(2012)において酸素同位体と古地磁気の複合年代層序が編まれ,3.1Maから2.3Maまでの年代モデルが構築されている.そして山本ほか(2017,古生物学会)では浮遊性有孔虫化石の群集解析を行い,得られた群集組成を変換関数PFJ125 (Takemoto & Oda,1997)と現生アナログ法に適用し古水温の復元を行った.復元された水温は海洋同位体ステージ(MIS)G6とG4で特に大きな低下を示した.しかし岡田ほか(2012)で測定された酸素同位体比が112層準あるのに対し,浮遊性有孔虫の群集解析は49層準にとどまっており,氷期-間氷期サイクルに対応した水温や水塊の変動について議論するためにはより多くの層準で群集解析を進める必要がある.今回は2.95Maから2.85Maの間で9層準,2.7Maから2.5Maの間で14層準の群集解析を行い新たにデータを加えた.

2.92Maでは混合水域に多産するNeogloboquadrina incomptaが高い産出頻度を示し,変換関数,現生アナログ法により復元された古水温も1~2℃程度低下していた.この層準は布良層での酸素同位体曲線をもとにした年代モデル(岡田ほか,2012)によるとMIS G16の氷期にあたる.このことよりMIS G16の氷期では黒潮前線が南下し,房総沖での混合水の影響を強めたと考えられる.一方でMIS102やMIS100の氷期にあたる層準では温暖種のGlobigerinita glutinataが最も高い産出頻度を示し,寒冷種であるN.incomptaNeogloboquadrina pachydermaの産出頻度の増加は確認されなかった.そして復元された水温の低下も見られなかった.この様に氷期-間氷期サイクルが必ずしも群集組成に影響していない可能性があり,今後さらに多くの層準で群集解析を行い検討する必要がある.