日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 古気候・古海洋変動

2018年5月23日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室、共同)、佐野 雅規(早稲田大学人間科学学術院)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、加 三千宣(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)

[MIS10-P14] 簡易気候モデルを用いた現在気候および氷期気候における大西洋子午面循環の多重解構造の比較

*安藤 大悟1岡 顕1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:氷期気候、大西洋子午面循環、気候モデル

氷床コアから過去の気候を復元することによって、氷期にはDansgaard-Oeschger(D-O)振動とよばれる急激な気候変動があったことが分かっている。D-O現象が起こると、グリーンランドでは数十年のうちに気温が約10℃上昇する。このD-O振動には大西洋子午面循環(AMOC)の安定性が関与していることが多くの先行研究で指摘されている。AMOCとは、表層で北向きに流れ、北大西洋で沈み込み、深層で南へ戻るという、大西洋における一連の海洋循環である。先行研究によるモデル実験では、北大西洋への淡水流入によるAMOCのモードジャンプがD-O振動のような急激な気候変動を起こしうることが提案されている(Rahmstorf 2002; Ganopolski and Rahmstorf 2001など)。ところが、現在気候におけるAMOCの多重解構造については多くのモデル研究がなされているのに比べ(Rahmstorf et al. 2005)、氷期気候におけるAMOCの多重解構造について調べた研究はあまりない。そこで本研究では、簡易気候モデルMIROC-lite(Oka et al. 2010)を用いて現在気候および氷期気候のAMOCの多重解構造を調べて比較することを目的とする。
本研究では、まずMIROC-liteを用いて現在(CTL)と最終氷期最盛期(LGM)の気候をそれぞれ再現し、そのうえで両者においてAMOCが北大西洋域の淡水フラックスの変化にどのように応答するかを調べた。どちらにおいてもAMOCには多重解の構造が見られ、同一の淡水フラックスのもとで2つの安定モードが見られた。一方で、Ganopolski and Rahmstorf (2001)で指摘されたように多重解構造の詳細については現在気候と氷期気候で違いがあった。淡水フラックスを変化させていない状態において、現在気候においては現在の状態である"on mode"の他にAMOCが完全に停止する"off mode"が存在したのに対し、氷期気候ではAMOCの強さが異なるものの完全な停止はしていない"on mode"および"weak mode"の2つのモードが見られた。本発表ではそれらの結果についてより詳細に議論する。